岡村隆史のオールナイトニッポン 矢部浩之の公開説教

f:id:knockeye:20200428013250j:plain
岡村隆史オールナイトニッポン

  今週の岡村隆史オールナイトニッポンに、ひさびさ、相方の矢部浩之が来て、公開説教をしていた。
 やっぱり、若いころから苦楽を共にしてきた間からだけあって、岡村さんの性格の細かいところまでよく目がとどいている。深い話になって、聞いているうちに涙腺が刺激された。
 でも、スポンサーの関係で通常のコーナーもやらざるえず、そのままのテンションでハガキを読むので、普段ならウケるハガキもまったく笑えない。その状況が逆に超可笑しく、スタッフの笑いを誘っていた。
 岡村隆史の今回の炎上については、わたしとしては先に書いたとおりで意見に何の変りもない。
 岡村隆史の謝罪も「女性の方たちを不快にさせた」ということなのである。善悪ではなく、快不快で誰かを謝罪させること自体どうかと思う。しかし、タレントのお商売は、快不快が仕事の出来高であるわけだから、快より不快が勝っていたというならそれを謝罪する判断も別に否定はしない。
 矢部浩之の説教も、だから、事の善悪ではなく、岡村隆史人間性の話なのだった。タレントのお仕事は、こういう炎上事件が起こってしまうと、その是非を言っても仕方ないという判断についても同意したいと思う。そのことで、タレントの方はどんどん磨かれていく、一方で、視聴者はどんどんバカになるんだろう。
 炎上した発言についてざっと説明しておくと、ウェットストリームという、もともと下がらみのコーナー内で、長引く非常事態宣言について「神様は乗り越えられない試練は与えない」というフリで「自粛明けには普段お目にかかれないような可愛い嬢が仕事に出てきますからね」とおとしたわけだった。
 今週、矢部浩之も言っていたけれど、たぶん、彼がいて突っ込んでいたらそれで終わった話だった。突込みがないので、オチがきれいに決まらなかった。それで、ディテールを盛ってしまうことになった。その結果として、岡村隆史がマジでそう考えているようになってしまったわけである。
 くりかえしになるが、まず、まだ非常事態宣言が解除されていない、ましてや、非常事態が解除されたあかつきに、かわいい風俗嬢が増える、なんてことは、ただの妄想にすぎない。これに怒っている人は、いったい誰のために怒っているのか。非常事態宣言明けに風俗で働く予定の知り合いでもいるのか?。だとしても、非常事態の先が見通せない現時点ではすべてがただの妄想でしかない。妄想の正義で人を叩くのはただのヒステリーだろう。
 そういうわけで、矢部浩之もその発言の善悪について何かを言っているわけではなかった。だからこそ深い話になっていた。
 岡村隆史のトラウマについては、彼らの若いころにうっすら小耳にはさんだだけで、詳しく知っているわけではないので、踏み込んだことは言えないが、岡村隆史の話に風俗の話が増えるのは、その女性コンプレックスがあり、彼がよくストイックだといわれたり、仕事に異様なほど熱中するのも、そのトレードオフである可能性は高いと思う。トラウマがあり,女性不信が拭い去れない。そしてそこから逃げるかわりに仕事に打ち込んでいる。
 矢部浩之は「逃げ癖」と表現していた。女性関係だけでなく、人間関係も避けることが多かったそうだ。これは、しかし、酷であるかもしれなかった。岡村隆史は今年49歳だそうだが、トラウマはそれを一生超えられなくても責められない。実際には、自分の行動が、あるいは性格が、トラウマに支配されているとさえ気が付かないことが多い。
 矢部浩之が、結婚を長続きさせる秘けつをインタビューで聞かれたとき、「ありがとう」の言葉を欠かさないことと答えたのを聞いた岡村隆史は「白旗をあげるんや」と言ったそうだった。こういう例を今あげることじたい、矢部浩之岡村隆史の深いところをよく見ている証拠だと思う。無意識に女性を敵だと思っている。防御本能が働く。これを超えていくよりは、孤独でいることを選んだとしても責められない。しかも、それは意識的な選択ではない。
 19歳の矢部に20歳の岡村隆史が言った「性格を変えろ」という言葉を48歳の矢部が49歳の岡村に返していた。しかし、変えられないからこそ、その代わりにあんなにストイックに仕事に打ち込んできたと思うのだ。そして、その仕事ぶりは自他ともに認めるものだろうし、自ら恃むところがあるのも当然だろう。それでも、その根っこにある自己肯定感のなさは変わらない。それをいうのは残酷だと私には思えるのだが、身近にいる人にしてみれば、歯がゆく思われるのだろう。変われるはずだし、変われればもっと楽になるはずだと。
 他人が考えるほど、簡単に変われるのかどうかよくわからない。が、そういってくれる友達がそばにいたことは幸せだったと思う。
 変われるかもしれない。しかし,変われなかったとしても責める気になれない。そういう性格のトレードオフとして、あの熱心な岡村隆史がいたということを見抜いている相方がいるっていうのは、そういう深い人間関係が築ける世界って、今本当に少なくなっている。M1に10000人の人が応募してくるなんて人気のひとつにはこういう深い人間関係のある社会を無意識に希求しているところもあるのかもしれない。
 ところで、改めて言うけれど、炎上のもとになった発言自体は、ただのボケなんであって、それを叩くヒステリーが今後どうなっていくのか、どちらかというとその方がおそろしい。高遠菜穂子さんの帰国の時とか、この国を突然覆う集団ヒステリーの現場を何度も目撃させられてきた。誰かを罵り叩きたくなる、そんな感情を正義ということにして人を傷つける顔のない集団を私たちはいくつも見てきた。これから長引きそうな非常事態の時代に、引き続きこの手の集団ヒステリーが散発し続けるのかもしれない。

追伸

こんな記事があったので参考までに。

note.com