コロナ不況で株価が上がるのはなぜ?

 新型コロナの世界的な流行で世界全体の経済が縮小している。
 しかし、株価は上がっている。
 そんなことがありうるのか。
 株価が上がるのは、株を買う人が増えるからであって、株を買うのは、その株を発行している企業の業績が、今より上がると予測して、その企業の未来に投資する人が増えているってことである。
 GAFAのようなインターネット企業の株が上がるのはよくわかる。このコロナ禍でむしろアドバンテージがあるから。
 しかし、ものづくり企業が多い日本の株が上がるのはなぜなのか。野口悠紀雄のこちらの記事
「IT化もままならぬ日本の株価がアメリカの株価と同じように上昇するのは、奇妙なことだ。」
と書いてあった。
 それで思い出したのは、古賀茂明が去年の秋に書いていたこの記事
 上場企業の自社株買いが10兆円に達したというニュース。これが2019年度で、2018年度が7兆円だったそうだから、この調子で上昇し続けるなら、今年はもっと増えていてもおかしくない。
 日本の上場企業の保有する現預金は約100兆円なのだそうだ。これを従業員の給与や、新たな設備投資にまわさず、自社株買いにまわす。すると、企業の将来の業績に何の展望がなくても株価は上がる。株価が上がれば、経営陣の給与は上がる。株主から文句は出ない。こういう具合にして、日本の株価は不思議な上昇をしているようなのである。
 本来、経済を回して、経済のパイを大きくするためになされるべき投資が、単に、株価操作のためだけになされている。そのために実体経済は成長せず、一般社員の給与は上がらず、株主と経営陣の所得だけが上がる。これが日本の株価上昇の正体であるようだ。これはまあ「ある視点」にはすぎないが、しかし、黒田日銀総裁就任以来、非伝統的な金融政策で反デフレ政策をとってきたにもかかわらず、いっこうにインフレに向かわないのは、お金のまわりかたがこのような歪な構造になっているためではないかとも考えられるだろう。
 8月21日の日経新聞に英ファイナンシャルタイムスの「財政責任論、コロナで幕」というコラムが載っていた。

これまで浸透してきた「健全な財政を守る」という政策で最も恩恵を受けてきたのがどういう人々だったかを

考えると

長く考えられてきたのは、国の債務が増えると民間部門の資金調達コストが上昇し、民間企業による投資が難しくなるということだ。増税も当然のように、民間企業の利益率低下を招くとされてきた。

 ところが、日本の現実をみると、サプライサイドの企業側にカネが回るように金融政策を調整しても、彼らはそれを「投資」に回さず、ひたすら内部留保をため込んで、それで自社株を買う。これでインフレになるはずがない。

従来、常識とされてきたのは資産を豊富に持つ者、資本を保有または支配して収入を得てきた者たちに都合のいい考え方だった。

が、これはもう否定されなければならないだろう。
 というか、本来、民主党政権交代選挙でかったときに、「コンクリートから人へ」と掲げて、「子ども手当」など、ベーシックインカムの試験的運用に近いことをし始めていたはずなのである。高速道路の無料化にしても、沖縄の基地返還にしても、あのときの公約通りに実行していれば、今のような野党崩壊の憂き目は見なくて済んだはずだと思う。
 その公約を国民が支持して選挙に勝ったのだから、役人が何を言おうがそのまま実行していればそれでよかったはずである。
 この夏の豪雨でダムが決壊したとかで、「コンクリートから人へ」という考え方が間違っていたみたいなことを言う人がいるのだけれども、コンクリートが決壊したのであって、今回みたいな記録的な雨に対して、もっと強いダム、もっと強い堤防と築き続けることが賢明なのか、それとも人のネットワークを築くことが重要なのか、考えてみればわかるはずだと思う。
 政権交代後の1週間で、すべての公約を反故にした小沢一郎の裏切りがその後の混迷のすべてだったと今にして思う。
 話がそれたが、日本の現状は、お金がお金持ちの懐から出てこない仕組みになっている。これをちゃんと未来への投資になるような仕組みに変えていかなければならない。
 言い換えれば、大企業から税金を取って、若い世代の経済不安を取り除くようにカネを使わなければならない。これが自民党にできるかと言えば、できるはずがない。旧民主党にできるかといえば、これもできない。できるならあのときやったろう?。
 山本太郎や立花孝志が支持を集める所以だろう。今、国民の大多数の意見を受け止める政党が存在しなくなってしまっている。
 コロナの感染がまた拡大し始めている。春頃、日本のコロナ被害が少ないについて、麻生太郎は「民度がちがう」とバカなことを言って、外国の高官を唖然とさせた。自民党の政治家は、国民の民度頼みなのである。もし、ホントに民度が高いならこんな人ではなく、将来をデザインできる政治家を選ぶだろう。そういう政治家が必要だろう。マジで。

diamond.jp

wpb.shueisha.co.jp

[FT]財政責任論、コロナで幕  :日本経済新聞

「財政責任」という考え方の恩恵を受けてきた者たちが、利益を守るための戦いをあきらめると期待できる理由は何もない。実際、大幅な増税が避けられないとなれば、戦いの焦点はどの税負担を重くするのかに移る。

2020/08/21 12:15