『大正名器鑑』の世界 根津美術館と日本民藝館

 この週末、根津美術館に予約を入れていた。雨を覚悟していたが、突然に晴れ渡って夏空が露わになった。

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根津美術館

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予想最高気温は33℃だという。長い梅雨空に欺かれていた気分。

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根津美術館

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根津美術館のの庭

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 この時期の根津美術館の庭は、燕子花もおわり景色となる花はないが、長雨に洗われた緑が夏空に瑞々しい。

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根津美術館の薬師堂

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 園丁の人が風を通そうとか、お茶室の窓を少し開けていた。

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根津美術館の庭

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根津美術館の水琴窟

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 水琴窟がまるで唐三彩のような色合いなのも雨上がりの今だからだろう。

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根津美術館の庭

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 『大正名器鑑』は、高橋箒庵という茶人が、大正10年から5年にわたって刊行した、当時の茶入と茶碗の伝世品を博物学的に網羅した9編11冊からなる大部な書物で、今ではそれ自体が茶道具のような顔をして旅箪笥のような箱に収まっている。この刊行100年を記念して展覧会をひとつ立ち上げたというところ。
 「不聞猿」と銘せられた大振りの利休瀬戸茶入が面白かった。日光の見ざる聞かざる言わざるの聞かざるにたしかににてる。これは『大正名器鑑』では「存滅不明」とされていたものの、実は根津嘉一郎が秘蔵していたものだそうだ。
 《青井戸茶碗 銘 柴田》、《小井戸茶碗 銘 忘水》なども良かったが、井戸茶碗に関してはこの根津美術館で大規模な展覧会を観たことがあり、ここに来るとその体験を思い出してしまうので、井戸の印象はどうしても薄まる。
 茶碗で個人的に印象深かったのは《堅手茶碗 銘 長崎》。堅手茶碗ってのは不思議で、釉薬のかかったところだけを見るとまるで青磁のように見える。そういえば、井戸茶碗も磁器か陶器かはっきりしないとも聞いたことがあった。
 野々村仁清の《色絵結熨斗文茶碗》も京焼らしい典雅さで異彩を放っていた。梅雨時のお茶ということで、雨漏茶碗が何点かあったが、中でも《銘 優曇華》のしみの出方が華やかで心ひかれた。
 せっかくなので予約なしでいける美術館はないものかと探して、新装なったばかりの日本民藝館に足を伸ばした。駒場東大前からのわずかな道のりでもかなり汗をかいた。

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日本民藝館の酔芙蓉

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 なんとなく可笑しかったのは前庭の水瓶にいるメダカたち。

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日本民藝館のメダカ

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 根津美術館の錦鯉に対抗したわけではないにしても妙に納得してしまう。
 新装オープン記念ということもあり、オールスターキャストの感がある。濱田庄司バーナード・リーチ河井寛次郎、富本憲吉、芹沢銈介。
 根津美術館曜変天目だの井戸茶碗など観た後で、濱田庄司バーナード・リーチの土瓶を観ると、何かしら感慨深い。

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濱田庄司の土瓶

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バーナード・リーチの土瓶

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 そして、最近どんどん好きになっているのは芹沢銈介。琉球の紅型に学んだ型絵染のデザインセンスが素晴らしいと思う。

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芹沢銈介《沖縄笠団扇文着物》

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芹沢銈介《型絵染 沖縄風物》

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