千原ジュニアの『東大全共闘vs.三島由紀夫』

 千原ジュニアがコロナ休みの間に『東大全共闘vs.三島由紀夫』を観たそうだ。 
 あの映画で印象的な登場人物のひとりに、小さな子を小脇に抱えて、三島由紀夫にくってかかる学生がいる。
「つまんねえから帰るわ」
と途中で退席するのだが、映画の後半で再び登場するその人の現在の姿を千原ジュニアは、
「生き方が顔に出るというのか、無茶苦茶カッコいい」
と評していた。
 その「モノの見方」はさすがだと思った。そういうふうに見る人が多数派か少数派かわからないが、子供のなりたい職業NO.1が会社員って時代の人としては、「全共闘世代はトラウマ抱えてるな」くらいにしか思わなかった。
 『東大全共闘vs.三島由紀夫』というが、その実、東大生と東大OBの対話なのだ。しかし、千原ジュニアはそこに人間を見てる。そこがやっぱり根っから芸人なんだと思う。
 私があの映画で確認したのは、右翼も左翼もどちらも「反知性」を標榜していたという事実だった。そこからはサブカルチャーは生まれたけれども、カルチャーは生まれなかった。そのために政治と大衆の間に断絶が生まれた。
 千原ジュニアの「カッコいい」は現在の現時点として最もエッジの効いた視点なのだが、それはまったく政治的ではない。依然としてサブカルチャーはカッコいいが、カルチャーは不在ってわけなのである。

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