『リバー、流れないでよ』『ドロステのはてで僕ら』ネタバレ

 ヨーロッパ企画の映画は『曲がれ!スプーン』とか『サマータイムマシン・ブルース』とか観てた気がしたけど、あれはヨーロッパ企画の舞台を映画化したもので、正確にはヨーロッパ企画の映画じゃなかった。『12人の優しい日本人』が三谷幸喜の映画でないのと同じですね。
 この『リバー、流れないでよ』は、ヨーロッパ企画の長編第二弾で、記念すべき一作目は『ドロステのはてで僕ら』っていう映画があって、これは、海外の映画祭で多数受賞していて、特にシッチェス国際映画祭で観客賞を受賞しているのはすごいみたい。
 にもかかわらず、日本ではほとんど話題にならなかった。ので、私もまったく気が付かず佐久間さんがラジオで話題にしたころにはもう機会を逸していた。
 だから、この『リバー、流れないでよ』は何を置いても見ようと思ってた。そう思ってたひとは多いみたいで、甲斐荘楠音のついでに東京で観ようという心づもりでいたら、もうどこも満席で、仕方なく川崎チネチッタで観た。
 川崎って関西に例えると、大阪から見た尼崎によく似ていて、もちろん東京の方から見ると神奈川県に違いないけれど、神奈川から見ると川崎まで行くなら東京に行った方がって気になる。東京駅から川崎駅まで19分しかかからない。甲斐荘楠音は東京ステーションギャラリーだからほぼ川崎駅前のチネチッタは新宿や池袋に行くのと大して変わらない。もちろん日比谷よりは遠いけれども。レイトショーまで待てないし。
 とは言え、川崎もほぼ満席でした。甲斐荘楠音見てる間に満席になったかもな。多分拡大公開になるでしょうね。
 『リバー、流れないでよ』の前に、Amazonプライムで配信になっている『ドロステのはてで僕ら』も観たので、それについて。
 『ドロステ・・・』が国内であまりにも無視されたためか、『リバー・・・』はそのリベンジ的な意味合いもあるのか、2分間のタイムリープものという意味では同じ。『ドロステ・・・』は、そのタイトルの由来でもある合わせ鏡構造。2分前の世界と2分後の世界がふたつのモニターで繋がっている。
 この設定が秀逸で、ふたつのモニターはそれぞれ同じ建物の2階と1階にあるので、モニターを通して、2分前の自分に話している現在の自分と、2分後の自分に話している現在の自分の間を階段で行ったり来たり。
 説明するとややこしいが、映像で見ると結構分かりやすい。しかも、それが『1917』みたいにほとんどワンショットみたいに見える。
 やっぱり演劇人ってワンショット好きみたい。古典ギリシア以来の三一致の法則に縛られたいというマゾヒズムに加えて、やっぱりチャレンジングな課題に興奮するってアスリートの一面があるんだろうな。
 あまりにも自然すぎて一瞬幻惑されるが、実際、どうやって撮影したんだろうって思います。モニター越しの自分と話し合うってシーンが2分ごとに入れ替わり立ち替わり。しかも途中から、モニター同士を向かい合わせて、7つくらい奥のモニターと話したりしてる。
 それが本当に話してるなら楽だけど、そんなことあるわけないから、事前に撮影してた無数の映像と合わせてるわけじゃない?。すごくない?。下北沢と京都の勝利だわ。
 ただ、一部辻褄の合わないところはある。3階のヤバい人たちの盗まれたおカネ、どうやって見つけた?。そこは不可能ではないが、偶然だよね。と、アリストテレスに指摘されそうな気がするんじゃなかろうか。映画全体のユニークさやテンポの小気味よさにくらべたら小さな傷には違いないんだけど。
 それで、『リバー、流れないでよ』は、同じく2分間のタイムリープものの、姉妹作みたいな感じになってる。『ドロステ・・・』の方は、モニターで過去、未来とつながってはいるが、映画が追ってる時間自体は直線的に流れてた。だから、三一致の法則に則った演劇的な作りだった。
 これに対して『リバー・・・』の方は、2分間のタイムリープに陥って、同じシーンを何度も何度も反復する、映画的な面白さになっている。しかも、舞台が冬の貴船っていうのが、京都に拠点を置くヨーロッパ企画らしい。しかも、途中から雪が降り積もってくる。それも奇跡で、タイムリープの間に貴船に雪が降り積もっていくって、奇跡的にいい。
 ほんとはおかしいのよ。その辺はちゃんと作中にエクスキューズがありますが、でも、そういうこと抜きにして、タイムリープの間に雪が積もっていくって、偶然の生んだ奇跡だと思います。
 今回も、下北沢トリウッドがお金を出してヨーロッパ企画が映画を作ったってことみたい。今後の展開が楽しみ。


www.youtube.com

 ちなみに

これも見ました。この系統の映画が好きならオススメかも。