『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ネタバレ

 確かに、観ている最中は時間をわすれて惹きこまれるけれど、3h40minという上映時間はやっぱりひるませる。三連休でなければとても観に行かなかったかもしれない。
 しかしながら,退屈な映画で眠気と戦う2時間と同じ値段で、スコセッシとデカプリオの長編叙事詩が味わえると思えば贅沢と言える。
 客入りはそんなに多くなかったが、わたしの後ろにアメリカ人カップルらしいのが座っていた。なぜわかるかといえば、上映中によく喋ったから。
 マナーが悪いのか、それとも、居心地が悪いのかどっちなんだろうと思っていた。昔、野田知佑さんがインデアン居住区に暮らしていたころ、出会った白人に「ひしひしと敵意を感じる」と告白されたことがあるそうだ。
 そりゃそうだろうぜって思う。この映画もまあひどい話。デカプリオがオジのロバート・デ・ニーロを頼って街にやってくる。インデアンの嫁さんを連れた白人と挨拶する。その白人の嫁さんの紹介の仕方がまずひどい。「妻だ。純血種だ。」って。馬じゃないんだからさ。
 オセージ族は肥沃な土地を追いやられて、移住させられた先でたまたま油田を掘り当てた。そこにまた金目当ての白人が群がる。「純血種」っていうのは、そのオイルマネーの相続権があるって意味なのだ。
 ほぼ街ぐるみでインデアンの抹殺が行われている。医者も警察も銀行もグルになっている。そもそも生活基盤が失われているインデアン社会はなす術がない。白人たちは楽勝のゲームを楽しんでいる。アメリカの原風景。
 デカプリオが子供を亡くして泣いているシーンでは思わず笑ってしまった。いやいやそれまで何人殺してきたの?。よくそこで泣けるなって。笑うしかない。
 トランプのいう「アメリカを再び偉大に」って意味はこういうことなのだろう。ただ、これをちゃんと書籍化し映画化するのもアメリカなのでね。
 VOGUEのインタビュー記事によると、最初の脚本はFBI捜査官が不正を暴くっていう勧善懲悪のストーリーだったらしい。デカプリオは当初FBI捜査官トム・ホワイト役だった。だが主人公は退役軍人のアーネストに変更。新しい脚本では殺人事件とFBIの捜査で、複雑になっていくアーネストとオーセージ族の女性モリーとの結婚生活に焦点が当てられた。ディカプリオはアーネストを演じ、ホワイト役には新たにジェシー・プレモンスが起用された。
 ボケとツッコミが変わってもちゃんと演じられるのがデカプリオの確かさ。この変更は効いた。オセージ族の側から世界を見る初めての映画なのかも。
 ちなみに、音楽を担当しているロビー・ロバートソンは、前にも書いたけど、彼自身がインデアンだ。今年の8月に亡くなったそうだ。

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