『リアリティ』ねたばれ

 わたしはドキュメンタリーが好きなのでこういう映画は大好き。何とFBIの尋問を録音したテープをそのまま映像に再現している。したがって82分と尺もタイト。
 FBIの尋問テープを音声として流しながら口パクで演技すれば、第一稿は出来上がるだろうって感じ。冒頭部分には、テープがボイスオーバーつうのか被ってくる演出もあり、この映画全般、実際の尋問の再現なんですよってことが宣言されてるってわけである。
 「何だよ?、再現かよ」って言う人いるかしれないけど、実際のテープがあるかぎり、それ以外の真実はないわけで、それに言葉を飾ったり、不都合な部分を削ったりするからこそ映画なんだっていう意見にはまったく同意できませんね。
 監督のティナ・サッターは、事件の尋問記録について「すでにスリラーが完成されていた。リアリティ・ウィナーとは何者なのかということに完全に夢中になった」と語ってる。元は、ティナ・サッター自身の演出で『Is this a room』てふ舞台劇としてブロードウェーで上演もされ、グッゲンハイム・フェローシップをはじめ、多くの賞を受賞している。「音声記録を舞台の戯曲としてとらえる点で、俳優たちと一緒に何度も記録を読み返したことが大いに役立ちました。」んだって(CINRAの監督インタビュー)。
 主人公が「リアリティ・ウィナー」って名前なのがすでに奇跡だ。この厳然たる本名にリアリティがないって文句言う奴がいたら、そいつこそリアリティのない幽霊みたいな奴なんだろう。
 リアリティはすごく優秀で、ペルシャ語ダリー語パシュート語に堪能で、軍関連の施設で暗号解析みたいな仕事をしていた。そんなわけで、退官後、民間の軍周辺の組織で働きはじめたころも、秘密情報にアクセスする権利を有していた。
 それで、トランプ大統領が誕生した選挙にロシアがちょっかいを出していたって機密情報を手に入れることができて、それをメディアにリークする。ニューヨークタイムズワシントンポストに送ってればバレなかったのかもしれないが、The Interceptがへたをうって彼女の身分をバラしてしまう。5年半という服役は、トランプによる報復と現地でも捉えられているようだ。
 FBIの尋問が、事務的でなく、異様なほど紳士的に感じられたのは、トランプのジミー・コミーFBI長官解任とこの事件が実はリンクしていたかららしい。「コミーは、FBIが2016年の大統領選に対するロシア政府の介入に関する捜査をしていて、それにはトランプ陣営の選挙活動とロシアの動きのあいだに何らかの協力関係があったかどうかに関する捜査も含まれるという声明を出していた。」んだそうだ。Newsweek大場正明さんの記事読んでみて。
 映画の最後にリアリティの言葉が紹介される。「私は、確かに軍に忠誠を誓ったけれども、同時に、アメリカ人民に対しての誠実も宣誓していた。」
20代の女性がこういうこと言うのってすごくないですか。かっこいいです。
 彼女は現在テキサスの放牧場でひっそり暮らしているそうなんだけど、隣人が感謝の印に干し草の束を置いていってくれるそうです(ローリングストーンのインタビュー)。
 トランプ大統領が誕生した選挙に、ロシアが介入したかどうかについて、当時の私の気分としては、介入っつったって投票箱に直接手を突っ込んだわけじゃないし、偽情報くらいで左右されるかね?」って思ってたのだが、少なくとも一時的にはぐらつくってことはあるよなって思うようになった。人間って簡単に印象操作されるよな。


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