久しぶりに賀曽利さんの本を読んだ。『バイクで駆ける地球食べある記』
この新書が成立したのは、編集者が『バイクで駆けるインドシナ一万キロ』に興味を持ったことがきっかけらしい。この本の旅の大部分は『50ccバイク世界一周2万5千キロ』と重なるが、テーマはあくまで「食うこと」。「世界の人たちがふだん、あたりまえに食べているものには、けっしてまずいものはない」という現地食主義に徹している。じつは、食の研究家としても有名な賀曽利さん。旅の別の一面をかいま見られて楽しかった。
今では、ナンも普通のパン屋で売っているが、私が初めて賀曽利さんの本を読み始めた頃には、想像するしかなかった。本場のナンは、でも違うんだろうなぁ。読んでいると、食べたくなってしまう。チャパティ、ナシゴレン、チェロウカバブーなんて、名前を聞くだけで、すっごいうまいんじゃないかと思えてしまう。実際に口に合うかどうかは分からないが。
瀬戸内寂聴が、NHKの企画でインドを旅していた時、釈迦が苦行を捨てて、断食をやめた時に初めて口にしたといわれている何とか言う乳製品を飲んでいたが、「おいしい、ありがとう」という言葉とは裏腹の顔をしていた。私のような凡人は、世界の珍しい食べ物も、高級食材も味わう能力がないかも知れない。牛丼とか、ラーメンとかそういうモノがいちばん口に合うのかも。たとえば、さけ茶漬けとか。
確か、植村直己が北極圏を犬ぞりで走破した時も、イヌイットのすっごい食べ物が大好物になっていたりした。名前が出てこないけれど、つばめみたいな鳥の腹に、何かを積めて発酵させ、それを肛門からすするという。これも、植村直己の文章で読むとうまそうに感じしまうから不思議。ただ、コンビニにおいてあったとしても絶対手を出さないだろう。その土地込みの味なんだろう。
今から思えばアホなんだけれど、私はロシアに行くのに山ほどカロリーメイトを持っていって、ほとんど捨ててきてしまった。ロシアのパンとチャイはうまかった。日本に帰ってからしばらくパンがまずくて食えなかった。レナ川を旅する船の中で、毎日食べた焼きたてのパンの味は格別だった。