自壊する帝国

自壊する帝国

自壊する帝国

三連休の中日という人も多いだろうが、わたしは残念ながら、今日まで仕事だった。今が一番厳しい状況かもしれない。みんながいらいらしているのかも。しかし、「みんなきびしいんだ」と気が付いたら、気が楽になった。みんないらいらしているのを見て逆に落ち着いてしまった。
読書は、こういう忙しいときに最適な趣味だろうか。わからないが、とにかくよい本にめぐり合うと、いろんないやなことを忘れて没頭することができるし、読み終えたあとには少しだけ視野が広がっている気がする。
これほど面白い本もちょっとない。ソ連の崩壊を、情報分析官として知りあったさまざまな立場の人の視点で描いている。よく考えれば、あれだけの大国の崩壊に、ドラマがないわけがない。しかし、そのドラマに立ち会えるかどうかは、その登場人物たちとどれほど深い付き合いをしているかどうかによる。
その深さは作者の宗教にもかかわりがあると思う。宗教にたいして真摯であることは、人に対して真摯であることだから、そのことが一流の人物と共鳴しあうのではないかと思う。
どんな大事件であっても、事件がドラマなのではなく、それに対して人がどう反応したかがドラマであり、それがなぜドラマなのかというと、その反応のなかにその人の隠された本質が現れるからだ。
新聞報道なんかには到底あらわれないドラマが10年以上もたってこうして浮かび出ることに、何かしらの感慨を覚える。これがフィクションでないことが残念だ。もっととせがむわけにいかないから。