岸辺の旅

岸辺の旅

岸辺の旅

湯本香樹実の小説としてこれを最初に読むべきではなかったかもしれない。「夏の庭」を先に読むべきだったかな。私にとっては、これは甘い。
私たちの文化が死をどのように受容してきたか、言い換えれば、それは結局私たち個人が死をどのように受容できるかという切実さだと思うのだけれど、そのコンテキストの曖昧さに無自覚すぎると思う。
その意味で、お父さんの蟹が出てきたあたりがいちばんスリリングだった。あのまま、あらぬほうへ物語が展開するのかと期待した(自と他、生と死の境が交錯するのかなとか)のだけど、予定調和的にすんなり終わってしまったのが慊らない。
救いや癒しがそんなに安易であってほしいとは願っていない。