うっかり今週の日曜美術館を録画し忘れた。ありていにいえば寝過ごした。
横浜美術館でのドガ展を特集していたようだ。
途中から見ただけなので、まったくの聞きかじりになってしまうが、あの<エトワール>の左上隅、舞台袖に身を潜めるように描かれている男性は、踊り子たちを‘買い’に来ている客なのだそうだった。
フットライトを浴びるエトワールが羽化したばかりの蜉蝣だとすれば、舞台袖のカーテンの陰の黒い男は、巣に身を潜める蜘蛛なわけだった。
絵解きをして喜んでいるわけではない。水中花のように美しい踊り子の絵の片隅に、黒いしみを描きこまずにいられない。あの時も書いたように、やはり、ドガは、対象に潜む意味を知りたい強い欲求を、常に抱いていた画家だと思う。
番組は、一度展示されただけで、画家自身の手で封印された彫刻<14歳の小さな踊り子>のモデルが誰かを突き止めていた。
実在する踊り子で、姉はエトワールの一人でもあったが、貧しさから盗みを働いて、舞台を追われた。姉妹の消息は、あの彫刻が発表された翌年に途絶えて、その後の足取りはたどれなかったそうだ。