『チェスの話』

 話が前後するけれど、シュテファン・ツヴァイクの『チェスの話』を読んだ。

チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)

チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)

前後するというのは、さっきの「書痴メンデル」は、この短編集に収録されている一編なので。
 シュテファン・ツヴァイクは、この5月に亡くなった児玉清が好きだった作家だそうで、なかでも「チェスの話」がお気に入りだったそうだ。BSが入っていたころは、彼が司会する週刊ブックレビューを楽しみにしていたものだった。
 児玉清はおかしな人で、いつごろからか、「アタックチャンス!」のあのポーズをやるとき、華丸・大吉のモノマネを意識していたと思うのだけれど、考えすぎだろうか。そういうの面白がる人だったみたいな気がする。
 「チェスの話」に描かれているプロとアマチュアの相克。文中にある「遊技のなかで単に遊びのみに“diletto”のみに喜びを感じる、この言葉の一番良い意味での本当のディレッタント」は、児玉清自身が自己を投影した態度であったかもしれない。
 アマチュアリズムの物狂おしさを、プロフェッショナリズムを外国から輸入したこの国は、すこし軽んじすぎる。最初にそれがなければ、どんなプロも存在しえないということを、つねに思っておくべきなのだ。