『昭和の犬』、トーベ・ヤンソン展、スーラージュ

knockeye2014-11-13

昭和の犬

昭和の犬

 姫野カオルコの『昭和の犬』を読んだ。
 昭和33年生まれの女性が主人公で、祖父母と間違われるほど年が離れている両親という設定が‘みそ’というか‘きも’というか。
 というのは、そうでないと、その年の女性(芸能人だと浅野ゆう子とか)の父親に従軍体験があるのはちょっとむりがある。
 こういう細かいことに気がつくのは、私がこの主人公の世代に近いからだが、小熊英二が、『戦争が遺したもの』のプロローグに、上野千鶴子に‘わたしたち戦後世代’と自分も込みで呼ばれたことに違和感があったそうだが、しかし、自分たちの世代(芸能人だと木梨憲武の世代)ですら、いまだに‘戦後世代’でしかないことに否応なく気づかされたと、たしかそんなことを書いていた。
 浅野ゆう子とんねるずに何か戦争の傷跡をみることができるかといえば、たとえ見えなくても、当然それがそこにあるのだが、あったとしても、そういうことを文章に書き出せるか、といえば、それがつまりこの小説のチャレンジで、それが、ある女性の飼い犬の追想のようでありながら、独特の緊張をもたらしている。
 姫野カオルコの小説で、以前に読んだのは、『喪失記』だったと思うけど、アマゾンで見ると文庫でも1997年の出版になっているから、このブログもまだ書いていないし、そもそもインターネットにすらつながっていなかった。でも、あれ一冊で姫野カオルコの名前は忘れない感じ。

・・・・・・

 このところ忙しいのと、フォトショップタッチでグラビアをいじって遊んでいるのとで、書き漏らすことも多いのだが、横浜そごうでやってるトーベ・ヤンソン展には行った。
 ムーミンが世界的な人気を獲得するには、日本のテレビアニメが果たした役割もいくらかあったろうなと思ってみたりした。70年代、フィンランドトーベ・ヤンソンという女性が書いている「ムーミン」ていうの、アニメにしてみようと思った人は偉いな。世界に窓を開いている風通しのよい感じが。
 初日に行って混雑に挫折したことは書いたけど、横浜そごうはムーミングッズでいっぱいだった。美術館は六階なんだけれど、五階にも三階にもショップがあった。
 ホーローのマグカップがあったので買った。陶器のはいくつか持ってるんだけど、ホーローのは珍しい気がして。そうでもないのかもだけれど。
 ところで、映画『誰よりも狙われた男』のなかで、故フィリップ・シーモア・ホフマン演じるドイツのスパイは、なぜかムーミンのマグカップでコーヒーを飲んでいた。どういう演出意図だったんだろう?。体型が似てるからとか?。
 ムーミンの原画で驚いたのは、へたすると原画の方が文庫の挿絵より小さいの。はじめから‘ちいささ’が画家のイメージだったということだから。
 油絵では、1941年の「窓辺の女性」が私は好き。微妙な色の階調が知性的だし、明るくて希望を感じさせる。

・・・・・

 ブリジストン美術館の、ウィレム・デ・クーニング展にも出掛けた。デ・クーニングは初見だし数も少ないし、そんなにぴんと来なかったけど、むしろ、他の部屋に展示されていたピエール・スーラージュの「絵画2007年3月26日」がよかった。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/collection/works/180/
 白髪一雄もよかった。どちらも新しく収蔵された作品だそうだ。