「味園ユニバース」を観てきた。「ジャージー・ボーイズ」と「バーレスク」を足して4で割ったような。渋谷スバルの歌う「古い日記」がすごくいいし、彼と二階堂ふみの‘目ぢから’が大阪の濃い空気によく映える。
ただ、難点をいえば、悪役のやくざが大阪っぽなかったな。あそこにもうちょい‘愛嬌’がないと。
それと、観る前の映画評にも見かけたけど、‘バット’は記号を脱し切れていませんね。痛みを感じさせない。
暴行されて記憶喪失になる、そのきっかけのバットは、最後のもっていき方に必要だったからで、そこが予定調和的だったように感じるのは、二階堂ふみと渋谷スバルの存在感が、バットの痛みを超えてる。内面の痛みだけで押し切れたと思う。
最後のライブシーンがストーリー上のカタルシスにはなっていないよね。それはシナリオで、やくざやさんのストーリーと音楽系のストーリーがうまく絡み合ってないからなんだよね。
赤犬のボーカリストとしてポチ男を手放したくないというカスミと、茂雄を始末したいというやくざやさんの思いはどっちにしろ我欲なんだよね。その我欲のぶつかり合いが昇華するのが最後のライブシーンであるべきだった。
そうすると、こってこての浪花節のド演歌のブルースのべたべたな展開にはなるから避けたい気持ちもわかるけど、そのべたさに耐える存在感だったと思う、今回のキャラクターはみんな。だから、やくざやさんの作り込みが甘かったのが惜しい。
ただそれはシナリオの話で、映画としては、渋谷スバルと赤犬の音楽、二階堂ふみの存在感、そして、大阪の空気感で、楽しめる映画だと思う。二階堂ふみの大阪弁はうまいわ。「しょうもな」っていうあの感じ、関西の人しかわからないかも。まあ、観にいって損なことはないわ。