『ブレット・トレイン』

 伊坂幸太郎原作映画といえば中村義洋を思い出す。が、彼だけでなくいろんな監督に映画化されてる、なんか分からんが、映像作家を刺激する小説家みたい。
 それが今回はブラッド・ピット主演でハリウッドで映画化されたが、このコロナ禍の影響があって、撮影期間に日本に入国できない制約があったため、シナリオでかなり苦労したみたい。原作とはかなり違うことになっている。
 それであまり期待してなかったんだけど、原作ファンというニューヨークの屋敷さんが「面白かった」と言ってたので、「おや?」と思って観ることにした。
 屋敷さんの言ってた意味はわかった。もし、原作に忠実に作っていれば、もっとタイトなアクション・コメディになっていたと思うのだけれど、どっちかというとスプラッター・コメディになっている。
 たぶん制約からそうならざるえなかったと思うのだが、そっちに舵を切ると決めた思い切りがよかった。そうは言っても、日本を舞台にスプラッター?ってなった時に、シナリオライターがネタを出せるかって問題になってくるが、けっこうきちんと日本を「いじってる」のには隔世の感があった。
 日本人が観ても「完全にいじってますやん」と思えるくらいに日本文化が共有されてる。例えば、真田広之米原から乗ってくるあたり、ロケ地はコロナ禍の事情でぜんぜん米原じゃないんだけど、真田広之が乗ってくるなら米原だよねっていうのは、原作は東北新幹線なわけだから、ハリウッドのシナリオもなかなかわかってる感じ。
 スプラッターにしたせいでストーリーの構造は弱くなってるけれど、そのかわり、キャラクターの魅力で押し切っていて、特に、ミカンとレモンと真田広之の人物造形がよくできていて笑えた。
 『マリアビートル』を中村義洋で映画化したらどんな感じかなと夢想せぬでもない。JRは協力しないだろうけど、三池崇史の『藁の楯』みたく台湾新幹線を舞台にすれば可能かもしれない。


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