原作・監督・脚本が足立紳、主演が濱田岳、水川あさみの『喜劇 愛妻物語』。笑っていいのかどうか迷うくらい超おもしろい。
公式サイトの監督インタビューによると、主演の濱田岳に
「監督すみません、ここまで言われても、まだコイツ、ヘラヘラしてるだけなんですかね?」
と訊かれたそうなのだ。監督自身がモデルなんですけど。「コイツ」って。
足立紳が濱田岳をキャスティングしたのは、中村義洋の『ポテチ』の演技が印象的だったからだそうだ。中村義洋x伊坂幸太郎x濱田岳の映画では『アヒルと鴨のコインロッカー』より私も『ポテチ』の方が好きくらい。
濱田岳の映画では個人的には『ヒメアノール』がいちばんだったけど、今回はそれを超えたかも。主演でナレーションも兼ねている一人称の映画なのでほぼでずっぱりだし、濱田岳を堪能できます。
この原作は、いまは、この映画に合わせてなのかな、『喜劇 愛妻物語』と改題されているけれど、私が読んだときはまだ『乳房に蚊』というタイトルだった。
足立紳は、第一回松田優作賞を受賞した『百円の恋』が何といっても鮮烈だった。安藤サクラ、新井浩文。でも、それまでの下積みが長かったそうで、小説はそのころの実体験に基づいている。
印象的だった言葉に「こいつまたおれを許しちゃったんだな」っていうのがあったんだけど、映画では使わなかったみたい。あれはやっぱり小説的な表現だったんだね。いいセリフでも映画ではちょっと邪魔になるというか、台詞というより独白なので、濱田岳と水川あさみの最後のすばらしいお芝居で、言わなくてよくなった感じがしました。
- 作者:足立 紳
- 発売日: 2019/08/06
- メディア: 文庫