『事故物件 恐い間取り』

 中田秀夫監督自身にはホラー志向はないそうである。しかし、それでも『リング』の中田秀夫監督なので、そのあたりの描写はオハコってところ。
 今回の映画の原作は、事故物件住みます芸人の松原タニシの『事故物件怪談 恐い間取り』ってノンフィクションなので、これをフィクションに仕立てる芸がさすがだと思った。
 恐いってよりも笑わせる要素が強かったように私には思えた。もちろん恐いんだけど、「半沢直樹」でブレイクした江口のりこの演じる不動産屋さんが意外な活躍をするあたり、本質的にホラーを志向してないからこそのエンターテイメント性だったと思う。「いや、そっち?」っていう。
 先般亡くなった竹内結子が主演した『残穢-住んではいけない部屋-』って映画があった。同じく中村義洋監督とタッグを組んだ『ジェネラル・ルージュの凱旋』が大好きだったので期待したのだけれど、「ええ?」って感じだった。中村義洋監督も駆け出しの頃テレビでホラー関係の仕事をしていたそうで、ある意味では昔取った杵柄ってところがあったんだと思う。エピソードが羅列的になってしまっていた。『事故物件 恐い間取り』も羅列的になるおそれはあったはずだけど、別筋でうまくまとめていた。
 引き合いに出す必要なかったけど、好対照な印象だったので。中村義洋監督は、そのあと『決算!忠臣蔵』で、あれは原作は歴史書に過ぎないものを見事にエンターテイメントに変えて見せていたので、『残穢』の時は、得意分野だと逆にそういうことってあるんだと思う。
 主演の亀梨和也はジャニーズのなかでも映画映えがするのか、『美しい星』とか『俺俺』とか意外なところでいい演技をしている。リリー・フランキーと共演した『美しい星』は特におすすめ。
 『事故物件 恐い間取り』はたぶんヒットしたんだろうと思う。コロナ禍さめやらぬ頃の公開だったのに満席が続いていた。
 あと、松竹映画なので、出てくる芸人がみんな松竹芸能だったのも珍しいっちゃ珍しいのかも。


映画『事故物件 恐い間取り』【特報】8月28日(金)全国公開

美しい星

美しい星

  • メディア: Prime Video

決算!忠臣蔵

決算!忠臣蔵

  • 発売日: 2020/05/02
  • メディア: Prime Video