『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 』

 椎名誠が「純文学」と評した感じがわかった。いま、純文学を志向して文章を書く人はいない。もちろん、この本も「純文学」を目指してはいない。しかし、結果として「純文学」と評したい何かがそこに生じたからには、作家であり編集者でもあった椎名誠は、感嘆しただろうと思う。
 先週、佐久間宣行のオールナイトニッポンゼロに出ていたバカリズムが、オードリーのオールナイトニッポンを「あんなの『北の国から』じゃないですか」と言ってた。鋭いと思う。俯瞰して見た時、そういう何かがここにはある。
 若林正恭って人は月島の出で、吉本隆明と同じ産である。ってことを、私は何か意識している。江戸っ子なのである。カストロゲバラの顔を「命を燃やし尽くそうとしているものの顔」と見るのは江戸っ子だと思う。
 吉本隆明の思想は江戸っ子の思想で、山の手のお坊ちゃんには響かないようだったのもそのためだと思う。
 M1の予選に5000組が応募する時代は、作家を志望する若者より漫才師を目指す若者の方が多いのかもしれない。そこには、結果として「純文学」的な何かが生まれるんじゃないかと思う。