2025-01-01から1年間の記事一覧

『遠い山なみの光』ネタバレ

ひさしぶりに盛大にネタバレを書くことになったのは、最近、原作小説を読み返したばかりというだけでなく、この映画のエグゼクティブ・プロデューサーが原作者のカズオ・イシグロだとわかったからで。 前に書いたとおり、石川慶監督の原作改変のやり方には『…

オスロ、3つの愛の風景 より『DREAMS』ネタバレ

ダーグ・ヨハン・ハウゲルードっていうノルウェーの映画監督の「オスロ、3つの愛の風景DREAMS LOVE SEX」が、「どういうこと?」って感じで公開されている。 今年は何か3作品まとめて公開が流行ってるのか、近いところでは「ショーン・ベイカ…

GHFについて

パレスチナの続報。っていうには、もう遅すぎるが、このまえ上げた国境なき医師団に参加している日本女性の証言について、もう少し踏み込んでみたら、もうとっくに世界中でニュースになっていたみたい。 www.msf.or.jp 国連、ガザ人道財団を批判「人道的観点…

『パルテノペ ナポリの宝石』ネタバレ

8月22日に公開されていたのをうっかり見逃すところだったのは、パオロ・ソレンティーノ監督だと気が付いてなかったから。そんなに観てるわけではないが、この人の『グランド・フィナーレ』って映画は、ゴージャスな絵と思索的な内容で、すごく気に入って…

『ふつうの子ども』ネタバレ

結局、『遠い山なみの光』は観に行かなくても済むかもしれない。今週はいい映画が連続で手が回らないかもしれない。でも、原作小説を読みなおす機会ができてよかった。 『ふつうの子ども』は『そこのみにて光輝く』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保…

『壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記』ネタバレ

川上泰徳監督の舞台挨拶があるのは、こないだ『テイクアウト』を観に行ったときポスターで確認していたが、映画の舞台挨拶に懐疑的になる癖が出て、あれこれ思い悩んでいた。というのは、偶然、観るつもりにしていた映画がちょうどその時間帯に折り重なって…

『遠い山なみの光』映画観る前に思うこと

言わずと知れたノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロの長編デビュー作『遠い山なみの光』は、今読んでも鮮烈な印象を受ける。 もうすぐ、石川慶監督の手になる映画が公開されるにあたって、久しぶりに読み直しながら、 「憶えてるところもあるけど、肝心な…

ショーン・ベイカー初期傑作選 から 『テイクアウト』ネタバレ

『テイクアウト』も見逃さなくてよかった。十三駅前の第七藝術劇場ってところでやってた。十三って駅は乗り換えで頻繁に使うが、ここで降りたことは一度もなかったことに気が付いた。 『フォー・レター・ワーズ』(2000)が大学生のリユニオン・パーティーの…

『亀は意外と速く泳ぐ』『リンダ リンダ リンダ』『8番出口』ネタバレ

『亀は意外と速く泳ぐ』『リンダ リンダ リンダ』『8番出口』と3本続けて観た。 『8番出口』は言わずと知れた新作。『リンダ リンダ リンダ』『亀は意外と速く泳ぐ』はともに2005年の映画の再上映なんだが、わたしにとってはどれも初見。そういうフラ…

ショーン・ベイカー初期傑作選から『プリンス・オブ・ブロードウェイ』

前に書いたとおり、ショーン・ベイカー初期傑作選のうち『テイクアウト』を除く3本は観た。『テイクアウト』を見逃したのは、これも前に書いたとおり『となりの宇宙人』があまりに不入りだったために風邪をひいてしまったから。 しかし、『となりの宇宙人』…

小浜~京都ルートは鬼門

北陸新幹線の延伸が暗礁に乗り上げている。だから、「小浜~京都」ルートは鬼門だと言いたいわけではない。 北陸新幹線の延伸ルートとしては2016年に「小浜・京都ルート」で決まったが、敦賀まで実際につながった今になって「反対」の声が続々と上がって…

ショーン・ベイカー 初期傑作選から 『スターレット』ネタバレ(オチまで言う)

夏風邪は冗談じゃなく、ショーン・ベイカー初期傑作選の『テイクアウト』は見逃してしまった。9月に京都でやるみたいなので出かけるかも。 『フォー・レター・ワーズ』(2000)、『テイクアウト』(2004)、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』(2008)、『…

横尾忠則の肉体派宣言展

109シネマズHAT神戸で『大長編 タローマン 万博大爆発』を観た後、横尾忠則現代美術館で「横尾忠則の肉体派宣言展」。この流れはよい。 横尾忠則現代美術館はいつ行っても元気になる。 (原郷の森)2019https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kn…

『大長編 タローマン 万博大爆発』ネタバレ

こういうことを言うとあれだけれども、今年観た映画の中でいちばん感動したかもしれない。 と言いつつ、忘れっぽいだけかもしれないので振り返ってみると、『国宝』よりはギリギリこっちの方が好みで間違いない。しかし、今年もいい映画が多かったからなぁ。…

『中山教頭の人生テスト』ネタバレ

佐向大の『中山教頭の人生テスト』と、二ノ宮隆太郎の『逃げきれた夢』は、どうしても比べてしまう。 『中山教頭の人生テスト』では渋川清彦が、『逃げきれた夢』では三石研が、それぞれ学校の教頭を演じている。しかも、どちらもその教頭が主役。そして、ど…

YouTubeのCMの謎

YouTubeのCMっていったい何なんだろうと不思議に思うことがある。 明らかに生成AIで作ったホリエモンのフェイクがしゃべってたり、高橋洋一のフェイク動画については彼自身のチャンネルで正式に「偽物です」と警告していいたが、そういうフェイク動画が…

イスラエルとは (国境なき医師団の村元菜穂氏にガザの現状を聞く)

このガザ人道財団がその食料をその配給してる場所が結局その元々そういう危険な場所だということなんですけど。で、それをあえてそこでやってるというそういうことなんですか?そうです。 えっと、元々その場所が、えっと、もう今レッドゾンドと言われている…

ボローニャ国際絵本原画展

ボローニャ国際絵本原画展は、5枚一組のイラストであれば、出版、未出版を問わず応募できる。新人作家の登竜門という一面もあるそうなので、こないだのたなかしんの方が表現に円熟味があった。もちろん個展なのでボリュームも違う。 会場にお子さんの姿も多…

『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』

この夏、『鬼滅の刃』以外で満席になる映画なんてあるのかと思ってたけど、これは満席だった。 映画館が明るくなって、前の席に座ってた女の子が隣の子に「こんないい映画教えてくれてありがとう」って泣いてた。思わずツッコミたくなったが、救急医療のスリ…

『となりの宇宙人』ネタバレ

私を含めて三人しか観客がいなくて夏風邪をひいてしまった。 東京公開からだいぶ日にちがたっての地方公開なので、口コミが広がって敬遠されてるかも。『近畿地方のある場所について』と『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』が満席だったので…

桂二葉独演会

ひさしぶりに落語。 桂二葉は女性の噺家として初めて本格的に成功していると思われる。江戸時代に発生したこの落語という芸は、そもそも高座にすわって話すだけだから、いちばん性差に関係なさそうにもかかわらず、長い歴史の中でなぜか女性がすくなかった。…

グレタ・ガーウィグ『バッグヘッド』『ナイツ&ウイークエンズ』ネタバレ

グレタ・ガーウィグ監督作品は『バービー』しか観てないが、素晴らしい映画だったので悪い印象は持ってない。 でも、ノア・バウムバックが圧倒的に好きで、その印象はごちゃごちゃになってると思うことがあり、ときどき「あれ?、グレタ・ガーウィグって好き…

『入国審査』ネタバレ

昔、加曾利隆さんが書いてたけど、世界をバイクで旅してまわる猛者たちでも、国境が近づくと胃が痛くなるのも珍しくないそうだ。 入国審査ってのは、入国させるもさせないも審査官の気分次第なんで、ろくでもない審査官にあたるとひどいことになる。 日本の…

『KNEECAP/ニーキャップ』ネタバレ

アイルランドのラッパートリオの誕生秘話とでもいうべき映画。 なんだけど、どこまでホントなのかまったくわからん。というのも、ニーキャップの3人をニーキャップの3人自身が演じているので。彼らを知らない私には、ホントに全部本人なの?と思うくらいビ…

『未来への警鐘 原発を問う』ネタバレ

世代的に核戦争の恐怖が遠のいて、むしろ、現実的な脅威は気候変動の方だというのは、この暑さの中で聞かされれば納得せざるえない。原子力発電がCO2排出を抑制するのは、それこそアイゼンハウワーとかJFKの時代、原子力が夢のエネルギーだった時代の…

『メルト』ネタバレ

この映画はどれだけ評価しようとしてもその底はもう見えてる。ここに真実があるとしても、その真実は黒い塊のようで、真実であるには違いなく、そして決して消え去りもしないけど、この真実より別のウソを選ぶ人がいても誰も責めないだろうと思う。 その上で…

そうぞうのかけら - 砂で紡ぐたなかしんの物語

絵本作家たなかしんの展覧会。 アトリエのある明石の海砂を使ってマチエールに独特の深みがある。秋野不矩がインドの絵を描くときはインドの土を使って絵具を自作していたそうだ。彼女は出自が日本画なので、そういう絵具の使い方はお手のものだったろう。 …

エレベーターのボタン、あれで合ってる?

最近、暑さ対策でゴロゴロ引いて歩いている。背負うにしても肩掛けにしても肌に触れてる時点で暑苦しい。 無印良品のいちばん小さいやつ。でないと困るのは、美術館のコインロッカーに入れたいわけ。あんなのゴロゴロ引きながら展示室歩くわけいかんでしょ。…

『フロントライン』ネタバレ

『フロントライン』は官民でいえば官側の映画かなと思ってたので観る気がせずにいたのだけれども、YouTubeで関根光才監督のインタビューを観てそういう映画ではないらしいとわかったので遅ればせ。 思い起こしてみると、ダイアモンド・プリンセス号あたりの…

『コルチャック先生』

さすがに時代が違うかも。 モノクロームなのでもっと古いのかと思ったら1990年の映画。ということは、そのころは、冷戦が終わって、これから世界が平和になるんだって希望があったってことなんだろうなと想像してみることしかできない。 途中で『関心領…