『ウクライナから平和を叫ぶ』

 2015年にウクライナとロシアの紛争地域を取材したドキュメンタリー。
 予告編にもあるのだけれど、親ロ派のおばあさんが、ウクライナ兵がハーケンクロイツをつけてナチス風の敬礼をしていたなどとカメラの前で語る。もちろん、全ての証言の真偽を確かめる術は持たないけれど、まずあり得ない。ほとんどの観客がそう思うだろう。
 これを聞いて思った。つまり、歴史に鑑みて、このロシア婦人が誇れる唯一のロシアの正義はナチスに対する勝利なんだなと。
 裏返して言えば、ロシアのウクライナ侵攻には、ロシア人たちでさえ正義を語れないということを示している。戦争の被害者という意味では、ウクライナのおばあさんも、このロシアのおばあさんも違いないのに、こうなると、このロシア人のおばあさんには同情しにくい。正義はまず人の感情を動かすんだと改めて認識させられる。

 先月の末に国連の人権委員会が、新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害か行われていると中国を非難した。こんなことはとうの昔から、何年も前から指摘されていたにもかかわらず、このタイミングで正式な報告がなされた。
 おそらく、このあたりのタイミングでウクライナの反攻勝利が概ね国連で確信されたのではないか。そうでなくとも、中国に釘をさせる余裕が生まれたのは間違いないだろう。
 9月20日には、バイデン米大統領マクロン仏大統領、それに、岸田首相までもが国連でロシアを名指しで非難した。この裏には、安保理改革の意図がちらついている。ロシアの拒否権が何らかの形で制限されることになれば、中国に対する牽制になるのは間違いない。今のところ中国を足止めできれば上出来なんだろう。

 プーチンは核の使用まで仄めかしているが愚の骨頂だ。今なら北方領土を日本が強引に接収しても非難されないような雰囲気じゃないだろうか。正義は舐めちゃいけないと思う。正義は政治の場では実体がある。
 


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