「シン・ゴジラ」

knockeye2016-07-30

 庵野秀明の「シン・ゴジラ」を観た。
 庵野秀明は、この話をTOHOに依頼された時、「1作目の『ゴジラ』があればもういいじゃん」と思ったそう。どんなに大真面目にやってもゴジラは最初のゴジラのパロディにしかならないみたい。庵野秀明は逃げずに大真面目にやってる。それは偉いと思うし、それで、ちゃんとした水準のモノを出してくる。ジブリの鈴木さんに「ナウシカの続きやらないか?」って言われるのはわかる。
 ゴジラを着ぐるみにせず、野村萬斎モーションキャプチャーにしたのもすごいアイデアだと思う。それで観に行ったようなものだった。
 ただ難点を言えば、言葉の比率が高すぎると感じた。役者に芝居をさせてない感じ。これは押井守の「ガルム・ウォーズ」にも言えるかも。アニメの人だから、役者を信じてないってことはあるのかも。というか、シナリオの段階で、役者の肉体を想定してないような。
 それともうひとつ、これは難点ではなくもっと本質的に、東京じゃないとダメだったかなぁと思ってみた。
 ゴジラを真っ向からやるとなると、東京でないとダメというのはわかる。でも、同じくらいの強度のある意見として、今、ゴジラをやるなら東京じゃなかったというのもある気がする。
 じゃどこなの?って言われて、沖縄、福島では、スリリングな反面、ちょっと政治色が前面に出すぎるかもしれない。
 私が思ったのはそういうことではなくて、富山とか福井とか島根とかそういう地味な県に上陸したらどうなったかなぁと想像してみたわけ。中央政府は、ギリギリまで無視するんじゃないか。「ないよ、見間違いだよ、竜巻だろ?」みたいな。で、県知事とか市町村レベルで何とかしなくちゃならなくなる、みたいな。
 何なら、琵琶湖から出てきて城崎温泉街で暴れて日本海に帰っていく、次に、舞鶴あたりに現れたのを海洋巡視船でなんとかしたみたいなショボいのを実現できませんかね?。主人公は城崎温泉の老舗旅館の若旦那で、ゴジラから温泉街を守るために頑張るみたいな、松竹新喜劇的な展開で。
 それで、ゴジラも退治したりしない。追い返すだけ。好物の餌かなんかで誘導して。ラストは、追い返したゴジラ東京湾に異常繁殖して現れるってニュースを、主人公がマッサージチェアーに座って、フルーツ牛乳を飲みながら「ふーん」って見てるところで「完」。
 監督は井口昇でお願いします。