国立新美術館で、至上の印象派展 ビュールレ・コレクション展を観てきた。
印象派で、国立新美術館で、ということなので、混雑は覚悟していたのだったが、拍子抜けした。まあもちろんガラガラではないんだけど、行列に並ばされることもなく、スムーズに観て回れた。
もうすぐ、コレクションがチューリッヒ美術館に移管されるので、まとめて観られる最後の機会ということだそうです。
《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》は、ルノワールの人気絶頂の頃の絵でしょうね。1880年。
この翌年のイタリア旅行を境に、だんだんと画風が変わっていき、それまでのパトロンが離れていくことになる。
クラーク・コレクションのスターリング・クラークは、ルノワールを十指にはいる偉大な画家、とくに色彩家として彼に匹敵するものはないと絶賛しながらも、彼の後期の作品については「ソーセージのような血の色をした・・・」とか、「空気でふくらんだ手足」などと酷評している。
私もつい最近までは、晩年のルノワールについて「なんじゃ、こりゃ?」と思っていたのだが、2016年の、場所も同じく国立新美術館で、ルノワールの絶筆《浴女たち》に圧倒されて考えが変わった。
というより、俺はいったいいままで何を観てたんだ?って感じ。これに比べれば、人気絶頂の頃はまだ習作時代にすぎない。アンリ・マティスはこの絵を「過去に描かれたどの作品よりも美しい彼の最高傑作」と絶賛した。
今回の展覧会でも、1906年の裸婦《泉》
が展示されている。
これはもう裸婦のようで女のようで絵のようだけれど、何よりもルノワールなのである。
長いこと絵を観てきて、この絵の美しさが分かるようになってよかったと思う。ルノワールを理解したと言うつもりはないけれども、もちろん。