『なぜ君は総理大臣になれないのか』ネタバレ

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なぜ君は総理大臣にならないのか

 感染者数がどんどん増えているのと、あいかわらずの梅雨空続きで、なんとも気勢があがらない。 
 麻生太郎が言ったように「日本人の民度の高さ」が感染者数が少ない根拠だったのだとしたら、ここ1ヶ月で日本人の民度が急にさがったことになるが、どうしますかね?。

 『なぜ君は総理大臣になれないのか』って映画を観た。
 監督は大島渚の息子さんの大島新。監督は二世だけど、主人公の衆議院議員小川淳也香川県の美容室の子で、総務省勤務を32歳でやめて選挙に挑戦した。大島新監督の奥さんがたまたま小川淳也さんの同級生だったことから取材が始まった。小泉政権下、民主党からの挑戦だった。それから15年以上に及ぶドキュメンタリー。
 
 もともと映画にするつもりはなかったので、政権交代選挙の頃や、東日本大震災の頃のことはそんなに分厚くない。もっとも、小川淳也個人がどうだったかはともかく、そのころ民主党がどうだったか、忘れろという方が無理なので、われながら驚いたけれど、そのころの映像からは思わず目を背けてしまった。ある意味、ちょっとした残酷描写よりずっと心掻き乱される。
 この映画が成立したのは、小池百合子希望の党との合流騒ぎの中で行われた野党大崩壊選挙の小川淳也の戦いに密着したことだ。
 橋下徹の維新の会も足腰が弱いうちに国政選挙に誘い出されて芽を摘まれた。それを見てたはずなのにまた同じこと繰り返すんだと呆れたものだったが、それに加えて、小池百合子は合流が決まったあとに、候補の公認に条件を出してきた。解党的出発をした民進党議員としては、いきなり梯子を外されたわけだし、民進党の支持者としては、自分たちの投票先を篩にかけられたわけで、これではまともな選挙を戦えるはずもなかった。
 小川淳也は、この時、党の合流を主導した前原誠司の最側近という位置にいた。しかも、玉木雄一郎とは同じ香川県民主党支部で共に戦ってきた絆もあった。小池百合子とは政策に差がある小川淳也としては、希望の党から出るか、無所属で出るかで相当まよったようだったが、結局、希望の党から出馬した。
 古い日本語で言うと「義理に詰まる」ってやつ。いわば、戦国時代の浅井長政で、この戦いは勝てるはずがなかった。
 選挙期間中、有権者からかなりきついことばをかけられていた。対立候補はそれこそ地盤、看板、カバンを受け継いだ三世議員で、その上、四国新聞のオーナー一族としてメディアも手にしている。全国での希望の党の惨敗ぶりを考えると、しかし、2000票差ほどの惜敗と善戦だったのには驚いた。よほど人望がある人なのだろう。
 タイトルの「なぜ君は総理大臣にならないのか」ではなくとも、せめて、日本のオカシオ=コルテスくらいにはならないものだろうかと悔しく思った。もしくはバーニー・サンダースか。
 しかし、ご本人をはじめ、ご家族、運動員の方たち、支援者の方たち、全員が気持ちよい方たちで、個別訪問が禁止されている日本でも、こんな具合に気持ちよく政治活動する方法もあるんだなっていう希望は持てた。
 私はこの映画を、宮藤官九郎のラジオで知った。監督の大島新がプロデュースした『ボケますからよろしく』って映画を、宮藤官九郎が気に入っていて、そのつながりでこの映画も観てみたのだそうだ。このご時世にかかわらず上映館が増えているそうだ。
 ところで、この映画が午後からだったので、午前中は、セルジオ・レオーネつながりで、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を配信で観ていた。ほぼ4時間という尺をなめてて、途中で家を出なければならなくなり、映画館に行く電車の中と映画館のロビーで続きを観た。
 iPad miniは文庫本を開いたのと同じサイズ感だし、電車の中で本を読むのとおんなじ感覚で映画が観られる時代なんだなと期せずして実感した。


【特集】映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」政治家の17年間を追う…監督が問うものは

2019年2月19日 小川淳也 衆議院予算委員会