森アーツセンターギャラリーで「おいしい浮世絵展」。
食べものをテーマにした浮世絵展。なぜか国貞と国芳が多かった。
ということは、江戸の食事情ってことになる。他にも、広重、北斎、豊国などなので。
歌川国貞については、2018年の静嘉堂文庫の国貞展が、質、量ともに素晴らしかった。静嘉堂文庫は、どちらかというとお茶道具の美術館のイメージが強かったので、浮世絵の、しかも、国貞のコレクションがあんなに充実しているとは知らなかった。その上、それが書籍化されていないのは残念な気がする。あの展覧会で、国貞はやっぱり上手いんだなと納得したくらい。でも、それが紹介できない。撮影もできないし、図録もないので。
これは季節柄、土用干しの絵。浮世絵版の「誰が袖図屏風」という趣向。華やかながら、青を基調にした画面が夏らしい。
今回の収穫だったのは、歌川国芳の婦人像が多かったこと。
器も着物も涼しそう。白玉も旨そう。なんだが、それより何より、歌川国芳の女の趣味がはじめてわかった。このタイプかあ。つくづく江戸っ子だね。
国芳は、2009年のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツでの回顧展以来、ブームになったこともあり、数多の展覧会を訪ねたけれども、武者絵、戯れ絵が多くて、まともに女を描いた絵に出会わなかった。永青文庫で行われた、例の春画展にも何点かあったが、春画ですら、近江八景に見立てたりして、ちょっとふざけてた。
それが食をテーマにすると、女の好みがでるというのがいかにも国芳らしい。
国芳といえば猫だが、この耳の畳んだ感じとか、ほんとに猫を飼ってる人でないと描けないと思う。
歌川国芳を主人公にした小説では、河治和香の『国芳一門浮世絵草紙』が面白い。オススメ。
- 作者:河治 和香
- 発売日: 2011/08/05
- メディア: 文庫
- 作者:河治 和香
- 発売日: 2009/06/05
- メディア: 文庫