『フードラック!食運』

 ボン・ジュノ監督の『パラサイト』が、実はCGが緻密に駆使された映画だったという映像が話題になっていた。

nicholastakeyama.com
 
 これを見て思い出したのは、窪田正孝の主演した『初恋』で、重要なシーンがアニメーションになったことだった。あそこはCGで撮るべきだったのだろう。それができないのが日本映画の実力なのかもしれない。

 それはともかく、昨日の『ばるぼら』にしてもそうだが、お金も力量もない色々な日本映画が、どういう経路をたどって公開に至ったのかと考えると、少し大袈裟な言い方になるものの、愛おしい感じがしてしまう。どうやって流れついたんだろうという感じだ。
 『フードラック!食運』は、寺門ジモンさんの初監督映画。明らかに、焼肉を旨そうに見せるための映画で、最初はそういうドキュメンタリー映画として松竹から話が持ちかけられたんだそうだ。
 でも、寺門ジモンはフィクションを選んだ。ドキュメンタリーだと長年やっている「寺門ジモンの肉専門チャンネル」(フジテレビONE)や「寺門ジモンの取材拒否の店」(フジテレビ系)のダイジェスト版みたいにしかならないわけだから。
 ただし、シナリオを書き上げるのに6年かかったそうだ。しかも、出来上がったものは広辞苑のように分厚くなったので、プロのシナリオライターに切ってもらった。
 ふつう、そういう場合、寺門ジモンがシナリオを書いたと言わない気がするのだけれども、じゃあ、その広辞苑みたいな代物を何と呼べばいいのかってことになる。
 それだけの厚みは感じられる仕上がりになっていた。正直言って、プロットは他愛ないのだけれど、最初からそういうことは期待してないのだし、それに役者さんたちが、寺門ジモンさんの人徳で集まってる感じがある。
 エピソードは、長年の取材で集積したものなんだろうからウソがないし、それを、大和田伸也竜雷太、白竜、石黒賢寺脇康文、などなど錚々たる役者陣が演じるわけなので、そこは見応えがあった。
 いちばん最初の構想通りドキュメンタリーだったら、実際のお店の人の素顔を引き出さなければならなかったわけで、寺門ジモンとお店の人に人間的な信頼があっても、カメラにそれを写せるかはまた別の才能だと思うので、むしろ、親交のある役者さんたちにお願いして正解だったと思う。
 『ユー・ガット・メール』なんかで知られるノーラ・エフロン監督が、監督って、撮影というパーティーのホストなんだって言ってました。その言葉どおり、いい役者さんたちが、気持ちよく演じてました。
 キャストは食べ物で釣って集めたそうだ。少なくとも、寺門ジモン自身がそう思っている。「肉でキャストを集めて肉の映画を撮った」と監督が思ってる、そこまで狂気だと観る値打ちのある映画になるんだって感動が味わえる。


www.asagei.com
www.asagei.com

movies.shochiku.co.jp