『えんとつ町のプペル』観ました

 個人的にはあまりアニメを観ないのだけれど、『えんとつ町のプペル』は、スタジオ4℃だというので。
 西野亮廣の制作なので、考えてみれば当たり前だけれども、吉本興業制作。にもかかわらず東宝配給だった。
 吉本興業は、配給の目処が立たないまま映画を作っているんじゃないかって時があって『田沼旅館の奇跡』っていう、東京03の角田さんが主役で、バッファロー吾郎、東京03、キングオブコメディ(事件の前)、ロバート、バイきんぐ、かもめんたる、シソンヌ、それに、夏菜遠藤久美子と、なかなか豪華な役者を集めた映画があったのだが、いったいどれくらいの人が観たのか、関東一円でも、は大袈裟か、しかし、東京都内では、池袋ロサだけでしか上映していなかったと記憶している。『ビルとテッドの時空旅行』よりは面白かったかもよ。
 最近では、『エキストロ』って、謎の映画もあり、これなんか、寺脇康文とか、山本耕史とか、藤波辰爾とか、斉藤由貴とか、松崎しげるとかが出ていた小ネタ映画で、こちらはあまりお勧めはしないけれども、それにしたってもうちょっと上映館があってもよかったんじゃないかと思ったものだった。
 『R100』がこけたのがトラウマになっているのかもしれない。『R100』は、しかしながら、水道橋博士とか、岡田斗司夫とか、その筋の好事家には好評だったし、悪くはないと思ったが、ただ、テレビのダウンタウン松本人志を超えてるかというと、この人の場合、なかなかハードルが高い。
 『TOKYO SPEAKEASY』っていうラジオ番組で、水道橋博士西野亮廣が対談していた。実を言えば、それを聞いて、スタジオ4℃のアニメだと気づいたんだけれど、その対談はなかなか面白かった。中で、水道橋博士が言ってたのは、映画ってのは、星の光じゃないけれども、何十年か先に光を届けるような仕事だと。実際、観客は、6、70年前の小津安二郎川島雄三の映画を、新作映画を尻目に観に出かけるわけである。水道橋博士が言うには、だからこそ、批評を避けないでほしい。今は、町田智浩とかライムスター宇多丸とか、スタンダードたりうる批評があるわけなので、そこと対話しながら作品を作っていった方が、自分の立ち位置を見失わないだろうみたいなことだった。
 それともう一点は、声優のキャスティングのうまさ。わたしは、藤森慎吾が抜群に良いと思ったが、もちろん立川志の輔がキーになっているのは間違いない。
 この映画のメタ構造を立川志の輔の話芸が支えている。これはかなりユニークだと思う。西野亮廣の話しだと脚本は声優を想定しての「あてがき」だとのことだった。プペルの窪田正孝、アントニオの伊藤沙莉なんてちょっとムムっと思う。
 スタジオ4℃の選択にしても声優の配役にしても、プロデューサーとして、人の巻き込み方が上手いと思う。そういう想定ありきの脚本なので、というわけでもないかもだけれども、背景の想定も広くて深い。えんとつ町の成り立ちの話もユニークで興味深かった。なので、プペルのゴミ人間というファンタジーが浮かない。唐突に感じない。どころか最後には必然的にさえ見える。
 タレントが映画を作るとか、小説家が映画を作るとかいう場合と違って、この先にまだ何かあるのかなといった、ふところの深さを感じさせる。


『映画 えんとつ町のプぺル』予告1【12月25日公開】