煙草の利点

私が煙草を嫌いなのは、子供時分の経験のせいだ。そのころ、まだ父親が煙草を吸っていた。しかも、かなりのヘビースモーカーだった。遠出をする、あるいは、九州の実家に里帰りする、という、そのときの父の運転する車の煙草臭さは、今でも思い出せるくらいにひどかった。
車にも弱かった私は父の車に乗ると必ず吐いた。今にして思えば、私は車に弱かったのか、それとも、あの煙草の臭いにやられて車に弱くなってしまったのか、どちらが先かよく分からない。私は煙草を吸わないだけでなく、車にも乗らないが、実はそれもここに原因があるのかもしれない。
そういうわけで、わたしは主義主張で煙草を吸わないのではない。煙草のにおいにしても、たとえば、煙草を吸って2〜3時間たった風呂上りに、3メートルくらい距離をおいてすれ違えば、いい匂いだなと思わないこともない。
さまぁ〜ずが煙草の利点について話していた。二人とも煙草を吸う。
モリエールの昔ならともかく、今の世の中、煙草の良いところを探すのはかなりのオリジナリティーと表現力が必要である。
なぜそんな難易度の高い話になったかというと、以下のような話の流れだった。
タクシーが全面禁煙になったけれど、そもそも、タクシーみたいな密室で煙草を吸うのはあまり好きではないし、だから、空港の喫煙室なんかは大嫌い。ダメ人間の吹き溜まりで、あそこで煙草を吸うことで、その後の長時間フライトを、煙草を嫌いでいることが出来るくらいだ。
とは言いながら、さまぁ〜ず大竹が言う煙草の利点とは、
煙草の吸えないレストランなんかでロケをしたりすると、建物の外に設けてある喫煙場所に、煙草を吸うやつだけが顔をあわせる。そのときの感じがいい。そういうときに夜空を見上げたりするのもいい。完全にオフになっていて、大人になれるのだ。考えてみると、仕事のスイッチを全く切って、人と会話できる機会は、そんな時以外にはない。
フジテレビには、雰囲気のいい喫煙所があって、そこにいくと、普段は話をしないカメラマンさんとかとも話をする。取り留めない話だけれど、現場ではそうはいかない。喫煙所では、虐げられたダメ人間として、PもADも平等なのだ。
さまぁ〜ず三村が、こないだ十何年ぶりにきたろうさんと喫煙所であったら、
「三村、おまえまだマイルドセブン吸ってんのか」
と、煙草の銘柄を憶えていてくれた。
「うめえよな。マイルドセブン」って。
海外では、野外のバーベキュー場みたいなところでも喫煙スペースが離れているが、そこで盛り上がっていると、煙草を吸わない人まで話しに加わりに来たりする。そういうとき、「勝った」と思うのだそうだ、さまぁ〜ず三村は。