ベルギーロイヤルコレクション

knockeye2008-09-27

私はまだこのあたりの距離感がつかめていない。
ベルギーロイヤルコレクションを見るため、浮世絵太田記念美術館を訪ねたのだが、原宿というところは意外に近かった。「意外に」というのは、心理的距離に較べると、物理的な距離の方が近かったという意味。開館の一時間も前に着いてしまった。
とはいえ、心理的距離云々はさておいても、そんな時間帯に原宿に何があるというものでもない。手持ち無沙汰なので、明治神宮まで往復してみたが、外人さんの団体がガイドに引率されて、今まさに踏み込もうとしているところ。私は腕組みしてプラプラ入っていったのに、白人女性のガイドが、注連縄の下を通る前に一礼したのには面食らった。何となく毒気に当てられた気がしたのでそのまま退散した。
美術館に戻るとちらほら人が並んでいる。ほんとは私が一番乗りなんだが、郵便局みたいに整理券が出るわけでないので仕方ない。まさかと思うがあまり後回しにされるのもいやなので、私もとりあえず並ぶことにした。それでもまだ30分ほどは待たなければならない。太田記念美術館はラフォーレの裏である。その間の道というより路地みたいなところを、不思議なというか、刺激的なというか、そういう格好をした女の子たちが、大体二人一組で通り過ぎていく。けっこう飽きの来ない眺めである。
フォーレの裏に、半分オープンテラスみたいになっているカフェがあって、その入り口に猫がすわって鳴いていた。明らかに開けてくれという意思表示である。そのうちに従業員の人が来てかまってやると、満足そうに目を細めていたから、あの店の飼い猫か居候なのだろう。この朝は気温が下がって、秋の訪れを感じさせたが、朝のうちはまだ日差しがあったので、猫のあくびがよく似合う気分だった。
ベルギーロイヤルコレクションと聞いて想像したほどボリュームのある展示ではなかった。役者絵はやはり歌舞伎の世界に詳しくないと堪能はできないのだろう。それについて何も知らないはずのヨーロッパの人たちは、この絵をどうとらえるのだろう。特にくまどりとか、あの不思議な見得とか。
金魚尽くしという一連の絵が気に入って絵葉書を買った。こういうのは、鳥獣戯画からアニメへと続く系譜であるから、洋の東西を問わず、時代に寄らず楽しめる。
それともう一枚絵葉書を買った。猫が蛸とじゃれあって、「た古(ほんとは旧かなの「こ」)」という字になっている。楽しいという意味ではこんな楽しい絵もない。
さて、まだ昼前である。どうしようかと思いつつ、じつは心に引っかかっているのは、映画「トウキョウソナタ」の今日が初日で、川崎チネチッタ小泉今日子が舞台挨拶に来ている。そのために、昨夜チケットをネット購入できなかったのだ。
ただ、「生」小泉今日子に心惹かれるかといわれるとそうでもない。ブログのネタにはなるだろうけれど、どうしようか迷いながら、とりあえずチッタデッラのサルバトーレクオモでマルゲリータを食うことにして川崎に赴いた。
たぶんチケットが手に入らないだろうなと思ったのだけれど、わずかに残っているという表示。売り切れてくれてたら諦めも付いたのになぁと思いつつ、今日はやめといた。
サルバトーレクオモのランチタイムはバフェットとか、つまりビュッフェ形式で、あのおいしいピッツァは食べられなかった。残念。これからランチタイムは避けよう。
横浜美術館で「特別展 源氏物語の1000年」を観た。
源氏物語の世界は、何度か挑戦してそのたびに敗退している。今回も同様の結果。たぶん大学で国文学を専攻して、草書行書をある程度読め、源氏物語の梗概もひととおりは知っているということでないと、「源氏物語図屏風」とか、「この人たち何してんの?」という感じである。逆に、国文科で源氏物語を専攻している人には夢のような展示であろう。国宝、重文も含め、屏風、絵巻、は言うに及ばず、本や史料まで網羅している感があった。
私としては、月岡芳年の田舎源氏と松岡映丘の大和絵が気に入ったくらい。土佐派というのはこの分野で鳴らしていたんだと納得した。
関連する常設展示で「謡幻想 田村 隅田川」という能に材を取った四曲一双の堂々とした屏風がひときわ目を惹いた。山本耗花という戦前の知らない画家の絵だった。