ゴー・ビトゥイーンズ展

knockeye2014-08-12

 森美術館に「ゴー・ビトゥイーンズ展」。
 こどもを通して見る世界というサブタイトルがついている、たぶん、夏休み企画。
 在日コリアン3世の金仁淑の写真に、この展覧会のテーマである「ゴー・ビトゥイーンズ」をこじつけようとすれば、ビトゥイーン日本・韓国ということになるだろう。しかし、日本の文化そのものがもともと雑種なものだし、私たちの文化からハイブリッドな要素を取り除いていったとして、それでいったい、何ほどのものが残るか、知らないけれど、もしどなたかがそんな分類作業に偏執狂めいた情熱を傾けて、これが日本の純血な文化です、と提示してくれたとしても、「で?」というだけである。
 「万世一系」なんてのは、富士山の高さと一緒で、たまたまそうなっているにすぎない。国民的な議論に値いするとは思わない。天皇家が身内できめればよい。文化はすべてたまたまなんであって、サルトルがそういったように守られるべきではない。
 国民的議論が必要なのは、何をなすべきかの選択についてであって、正しい選択が良い文化になり、それがまた次の世代によい道標となるはずであり、実際のところ、伝統という言葉の内容はこういうこと以外にはありえない。文化だから悪行が許されるなんていうことはない。悪行の言い訳になる文化などない。
 そうだからこそ、わたしたちは「愛国心は悪党の最後のよりどころ」という、サミュエル・ジョンソンの言葉にクスッとなるのだし、クスッとならずに、ムッとなるひとは、痛いとこつかれてるんでしょ。
 森美術館の下の森アーツギャラリーでは、ピカチューの展覧会がひらかれていて、帰りのエレベーターは、それを観に来ていた韓国のカップルと私だけになって、妙に気を遣った。正直、ビキニの女性と2人きりでもこんなに気を遣わないと思うわ。ほんとに、反日嫌韓もいいかげんにしてほしいわ。
 前にもちょっと書いたが、ここにも、フィオナ・タンの作品がひとつ。
 フィオナ・タンと梅佳代奈良美智が別格な感じ。他の作品と較べると、死んだ子供と生き延びた子供くらいの違いがある。ただ、梅佳代にかんしては、今回のテーマなら、「女子中学生」より「男子」だったんじゃないかという気がする。
 人にはお勧めしないけど、自分としては見てよかったと思う展覧会。