虚偽報道のその後

knockeye2014-08-13

 慰安婦問題についての虚偽報道を認めた朝日新聞だが、もれ伝わるところによると、それは日本版だけで、英語版では訂正どころか、おくびにも出していないのだそうだ。それはまあ、逆にいえば、重大さを認識している裏返しとは言えるだろう。
 先日紹介した、神奈川新聞の「本質は強制連行にない」という社説は、地方紙の記事としては異例のブックマークを集めているようだが、これも、あの朝日新聞の報道が虚偽だとなれば、強制連行では争えないと認めたも同然ではある。
 橋下徹がこの問題を提起して以来、私なりにこの問題を考えてきたけれど、「強制連行は本質ではない」には耳を疑う。
 「強制連行」のない「慰安婦問題」は、言い換えれば「戦時下における公娼の人権問題」である。70年前の戦争のそうした人権問題について考えてみることはいいことだし、元慰安婦の方たちに何らかの形で償いをするのもよいことだと思うのだけれど、ただ、そうなると、いずれにせよ、今、韓国のナショナリストが世界中で吹聴している「慰安婦問題」とは、ほぼまったく違うものになりはしないだろうか。
 そもそも、アジア女性基金のお金を‘受け取ったら国賊だ」とか言っていた挺対協の論理は、日本が、国家として組織的に女性を徴用して、売春を強要していたが、その証拠を隠しているというものだったはずだ。したがって「強制連行」は、まさしく、議論の争点そのものであって、そこに本質がないなんてことはありえない。
 それに、挺対協という名称自体が、「韓国挺身隊問題対策協議会」といって、今度の朝日新聞の訂正記事にあったように、挺身隊と慰安婦を混同している。その程度の貧弱な情報に基づく、イメージ先行の運動であることは、ちょっと水曜デモをのぞいてみればわかることだろう。
 在特会が自分たちを差別団体ではないといっているように、挺対協も自分たちは差別団体ではないと名乗っているが、日本で在特会に抗議して、韓国の挺対協に共鳴する人がいるとしたら、その人はどうかしている。
 ハフィントン・ポストに「韓国の大学生にとって日本、そして慰安婦問題とは何なのか?【学生座談会】」という記事があって、興味深く読んだ。
 そのなかで、韓国の学生が
「韓国人には、謝りさえすればそれを受け入れる準備はあると思う。なんで謝罪をしないんだろうという疑問を持っている人が多いです。謝れば日韓関係がよくなり、両国の未来への発展が進む。さらに、慰安婦問題を謝罪しないという姿勢は、慰安婦問題だけじゃなくて、そもそも過去に日本が戦争で行なったことを認めないということとして捉えられます。(慰安婦問題は)とても象徴的な問題になっていると思います。」
といっているのが、やや、アンダーステートメント気味ではあるだろうけれど、本音なんだろうと思う、「なんであやまんねぇんだ、こいつら」というのが。
 これが、たぶん、多くの日本人にとって意外なのは、「いったい何回あやまりゃきがすむんだ、こいつら」と思っているはずだからだ。
 だから、河野談話の罪深さっていうのはこれで、日本人から見ればやみくもに謝っているように見えるが、韓国人からすれば、ごまかされているようにしか見えない。
 とくに、談話の中では認めていない「強制連行」を、のちに河野洋平個人が認めるかのような発言をしたために、双方の疑念に拍車がかかった。
 河野談話の再検証が、慰安婦問題を解決するためには、非常に重要な一歩になったと思っている。あれが、今回の朝日新聞の訂正記事につながった。
 実は、わたしもこの学生さんと同じで、「なんであやまんないんだろう?」と不思議に思っていた。でも、河野談話の再検証の結果を知って、「これじゃ謝れないわ」と納得したわけ。
 韓国も日本も、たった16人の証言をただ聞いただけで、調査も何もしていない。ちゃんと裏付け調査をすべきだった。謝罪よりも、それが誠意であるはずだった。しかし、そうしなかった。
 アメリカでは、もう日本人の子供たちがいじめられているそうだ。子供は、たぶん、食卓での両親の会話をまねているだけだから、日本人に対する差別がひろがり始めていると考えてよいと思う。
 朝日新聞の虚偽報道は、そういったすべてのことの強力な推進力となったとだけは、一応言っておきたい。