「ジェイソン・ボーン」と「お父さんと伊藤さん」

knockeye2016-10-08

 文藝春秋芝山幹郎が、「スターは楽し」つう連載を書いてる。10月号では、「ジェイソン・ボーン」の封切りを控えたマット・デイモンを、主役と脇役の両方をこなせ、利口と馬鹿の両方を演じ分けられ、ヒーローを演じても、ダメ男を演じても、ともにリアル、と評している。読み返してみると、最大級の賛辞ってヤツですかね。
 たしかに、ジェイソン・ボーンは、そういうマット・デイモンなりゃこそ、成立する企画かしれない。じゃなきゃ、けっこう退屈なんかもしれない。
 寅さんと渥美清までいかなくとも、ジェームズ・ボンドショーン・コネリーぐらいの当たり役と言ってよさそう。
 西部劇ですけどね、乱暴に言っちゃうと。でも、ギリシアのデモとラスベガスのカーチェイスは、金の掛け方がちがいます。
 それから、スウェーデンの名華、アリシア・ヴイキャンデルが、面白い具合にプロットをひねってくれてます。
 「おとうさんと伊藤さん」てふ、タナダユキ監督の映画を観ました。
 上野樹里が、本屋でアルバイトしてる34歳の女子で、54歳で小学校で給食作ってるリリー・フランキーの「伊藤さん」と同棲している。
 この設定に、「意外にリアルかも」って思える人は、そこに、上野樹里の74歳の父親、藤竜也が転がり込んでくるって聞くと、「で、どうなるの?」と、先が知りたくなると思う。
 リリー・フランキーは、「SCOOP!」のチャラ源がうそみたいですけど、難しい役どころをすんなり演じてますね。しかし、藤竜也のお父さんがさらによいです。
 小学校の教員を40年勤め上げて、妻に先立たれたっていう、捉えようによっては、小津安二郎的なたたずまいでもおかしくないんだけど、そうは問屋が卸さないって、変な方向に転がってっちゃいます。
 でも、意外にいるよね、こういう人って、思えちゃうので、なかなかのものです。北野武監督の映画に出てからふっ切れたのかな?。あれは観なかったんだけど。面白かったのかも。
 小津安二郎監督の世界観は、すでにノスタルジーのかなたにあるとすれば、この家族のあり方は、意外に(て、何回言うんだ?)、今なのかなと、たとえていうと、村田沙耶香の「コンビニ人間」なんかと同じ時代を生きてるかなとか思いました。
 お伽話には違いないんですけど、お伽話の方が実話よりリアルってことあるじゃないですか?。あの感じです。
 ああ、そういえば、今月号の文芸春秋塩野七生の連載エッセーが「コンビニ人間」を取り上げてました。やっぱり、エポックメーキングな小説だったと思います。