『JUDY』について、週刊文春のシネマチャートの☆の数が意外に少なくてびっくりしている。
こういうとき自分に信頼をおけなくなってしまうが、個人の感想としては、観てよかった。たぶん、シネマチャートの批評子たちは、ジュディ・ガーランド本人に思い入れがあるので、評が辛くなるのだと思う。芝山幹郎さんなんか「ジュディ・ガーランド本人の映像観ればいいじゃん」みたいな元も子もないことを言う。この人が『トランボ』を酷評していたのも、あの映画でジョン・ウェインが悪役に描かれていたからじゃないかと勘繰っている。
この映画は、でも、レネー・ゼルヴィガーっていうコメディエンヌのカムバック作として観るのがフェアなんじゃないかと思う。
この作品でのレネー・ゼルヴィガーのアカデミー主演女優賞は、『JOKER』でのホアキン・フェニックスの主演男優賞と同じ意味で納得。この役者ありきで成立している。
ジュディー・ガーランドがLGBTQコミュニティのポップアイコンだったことを初めて知ったし、子役のころから太らせないために薬漬けにされていたということも初めて知った。
でも、それよりも、この映画全体の基調が明るいこと、描き方によっては、これでもかというほど悲惨になりえたかもしれない物語を、ほとんどの登場人物が、どこか憎めない感じで描かれている、そのベースカラーは、レネー・ゼルヴィガーが作り出した空気だと思う。
作品全体のトーンを支配しているレネー・ゼルヴィガーのこの感じは、アカデミー主演女優賞にふさわしい貫禄だと思う。
今回のアカデミー賞を席巻した『パラサイト』や『JOKER』が「格差」というキーワードで切り取られすぎているので、この映画の前を向く明るさに動かされた。
Judy Trailer #2 (2019) | Movieclips Trailers