マティス展

 東京都美術館マティス展を観に行った。
 ほんとは国会前のデモに行くつもりだったのだけれど、時間を間違えてたみたいでもう終わってたのだ。そりゃそうだわ。朝の10時に採決するってのに夜やるはずなかった。ふだんTwitter見ないのでこういう時行き違いが起こる。
 おりからの曇天もあって国会議事堂は権力欲の凝り固まった石の瘡蓋のように見えた。9.11のテロの時に、連邦議会ビルを狙った機体は乗客の反撃にあって墜落したそうだが、日本ならどうだったろうか。あそこに国民の代表がいるとはとても思えない。
 前日のガーナの少女の訴えは胸が痛かった。成績はクラスで3番だと言っていた。学校の成績がこんなに切実に響くことはあまりないだろうと思う。それなのに、ある国会議員は、小学校を休ませてデモに参加するなんて「日本人にはちょっと想像できない行為です」と、原発デモの時のコピペのつもりかそんなツイートをしていた。明日にでも親と引き裂かれるかもしれないという時に、小学校の授業とこのデモとどちらが大事か、そんなこともわからない人間が集う場所なのである。
 日本がまともな国なら彼女はとっくに日本人なはず。彼女が日本人でないのは日本がまともでないからだ。私はまともな国に住みたいと思う。それだけだ。
 文化庁の前を通ったら、「JAPAN cultural EXPO」と何のことかわからん垂れ幕が下がっていて、「日本の文化を晒してます」と書いてるようにしか見えなかった。
 マティスのレトロスペクティヴは、20年ぶりだそうだ。けっこう目にするのでそんな気がしないが。マティスとボナールの共同展が2008年にあったがそれも15年前か。
 そんな具合でたまたま足を向けたに過ぎなかったけれど、今回のマティス展に特徴的だったのは、絵だけでなく、立体作品が多数展示されていたこと。 
 中でも、《横たわる裸婦 1 》には驚いた。抽象的でありながら、ヘンリー・ムーアより生々しい裸体。見る角度を変えるとまるで違う像に見える。こういう塑像をマティスは油絵の下絵として作っていたそうなのだ。
 マティスのたとえばこういう

かなり単純化された線描の裸婦がなぜ肉感的なのか

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不思議に思っていたのだけれども、この塑像を見て納得がいった。いったんこういう立体に落とし込んでから線にしていたのだ。それであのラフに描いたように見える線が生々しいのだろう。すごいものを見たわ。
 1Fは撮影可だったが、《横たわる裸婦 1 》の階は撮影ができなかった。あれこそ動画で見ないと、少なくとも、色んな角度から見ないと、それより何より、実物を見ないと、まったく伝わらないだろう。
 今回のポスタービジュアルは何故かシニャック風の習作が使われているが、同じ頃の作品なら、《豪奢1》や《金魚鉢のある室内》の方が断然好きです。

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両腕をあげる裸婦

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裸婦

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デッサンが素晴らしい。

赤の大きな室内

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黄色と青の室内

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