2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

濱口竜介と三島由紀夫、吉本隆明、江藤淳、村上春樹

濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』を観て、そして、彼の作品に対する世界中の熱狂を見て、改めて、書き言葉(テキスト)こそが言葉だと確信する。 言葉で何かを作ろうとすると、それがたとえ即興劇であったとしても、言葉は書き言葉になるしかない。こ…

『皮膚を売った男』

ケーン・デ・ボーウの演じる現代芸術家ジェフリー・ゴドフロワがカメラに向かって 「芸術は死んだと言われているが、現代ほど芸術がエキサイティングであった時はない。」 という。 「芸術が死んだ」という常識としつつ、それも含めてなお芸術がエキサイティ…

『偶然と想像』、『寝ても覚めても』

濱口竜介監督の演出が世界中を魅了しつつある感じ。 『ドライブ・マイ・カー』の主人公が披露した独特な演出方法は、宇多丸さんは濱口竜介監督自身の演出方法だと言ったが、濱口竜介監督自身はあれは私の演出方法ではないと答えている。 あれが彼の演出方法…

『SAYONARA AMERICA』

パンデミックは世界的オペラ 『SAYONARA AMERICA』は『NO SMOKING』に採録された細野晴臣のアメリカツアーのライブの再編集版といった面持ちなんだけれども、この2年で世間もこちらも変わってしまったせいか、熱量というかグルーブ感というかがまるで違って…

『ボストン市庁舎』

フレデリック・ワイズマン監督の『ボストン市庁舎』を観た。 上映時間4時間ごえという、この長尺の持つ意味は、今回の場合、今までの作品と違って、主人公がマーティン・ウォルシュ市長ひとりにしぼられてしまうおそれがあったからだとおもう。プロパガンダ…

川端龍子の《竜安泉石》

大田区立龍子記念館で《竜安泉石》を観た。 会場を長方形として、入り口側の短辺のウィンドウケースに展示されていた。その対面側の、河童の絵のところで振り返ってみて《竜安泉石》の全体像が見えた時にハッとした。 屏風として立て回されているのに、まる…

2021年の映画をふりかえる

2021年の日本映画で個人的にベストだったのは、石井裕也監督の『茜色に焼かれる』。これは、宇多丸さんのラジオでも別枠で評せられていたので、敢えて取り上げるまでもないかもしれない。akaneiro-movie.com 今さら去年の映画を取り上げるのは石川梵監督の『…

浅草キッドによる『浅草キッド』

水道橋博士が語る『浅草キッド』の裏話の階層が深かった。 特に、『浅草キッド』の構想は7年前からのもので、Netflix以外の全配給会社に断られていたというのも、意外というか、なるほどというか。 水道橋博士は、週刊文春に連載していた「芸人春秋」がパサ…

木島櫻谷、嵐山

福田美術館で木島櫻谷(このしまおうこく)の展覧会を観てきた。というか、三ヶ日で開けている美術館は珍しいか。 木島櫻谷は、夏目漱石に酷評されたことで知られている。現在のその知名度の差からして、今から振り返ると、この事件は重大すぎるように感じる…