幕末・明治の超絶技巧

 泉屋博古館分館というのが、地下鉄六本木一丁目の駅を降りて、スペイン坂をあがったところにある(初めて行ったけど)。
 本館はどこにあるのかと思ったら、京都の白川丸太町を東に入ったところだそうだ。京都のほうが本館なのがちょっとうれしかったりする。
 ここで「幕末・明治の超絶技巧」と題して、当時の金属工芸の名品約170件を展示している。
 絵に関しては、江戸以前と明治以降のものを比べると、歴然と江戸以前のほうがよい。狩野芳崖と橋本雅邦を江戸の最後と考えると、それ以後の日本画は、ちょっとどうだかなぁと思う。
 月岡芳年とか小林清親などの浮世絵は最近好きになってきているけれど。
 が、しかし、こと工芸に関しては、明治ごろのものがすごい。
 たぶん、刀装という舞台を失ったと同時に、皇室というパトロンを得たためだろうと思う。刀というくびきを離れて、かえって世界が広がったようにさえ見える。
 このころの工芸の技術は、しかし、急速に失われて、いまでは、当時のものを再現するのはほとんど不可能なのだそうだ。今回展示されている、金属工芸に限らず、七宝、漆芸などすべてにおいていえることだそうである。
 玄関に入ってすぐに、なんか鳥の剥製が並んでるなと思って通り過ぎたが、ほかの展示を見終わったあと、よくよくみたら、その十二羽の鷹すべてが、鈴木長吉という作家の金工品なのだった。
 展示室と展示室のあいだにおいてあった図録で、小箪笥というのを見て、アール・ヌーボー展でみたようなやつを想像しながら、‘こまかい細工がしてあるなぁ’と、実物をみたら、全長15センチもありゃしない。小箪笥にもほどがあるなぁとおもって。
 私が一番気に入ったのは、展覧会のサイトにも画像があるこれ。↓

 正阿弥勝義という人の<古瓦鳩香炉>。鳩の部分は蓋の把手で古瓦の部分は香炉になっています。
 <古瓦蜻蛉香炉>というのもさらによいけど、画像がないので。蜻蛉のほうは明治31年作、岡山県立博物館所蔵だそうです。
 訪ねてみたい人は、単眼鏡かなにか拡大できるものを持って出かけたほうがよいかも。
 このあと、サントリー美術館を訪ねたのだけれど、火曜休館だった。応挙の展示替えにあわせて休みを取ったので、まあ仕方ないか。
 ということで、乃木坂から帰るまえに乃木神社を散歩した。
 乃木将軍の旧宅が保存されていて、乃木夫妻殉死の部屋も外から見える。簡素な部屋だと思った。
 乃木旧宅の玄関まえに落ちていた棗の実。↓

 乃木神社には、たぶんハゼだろうと思う大木が、梢から紅葉し始めていた。
 ハゼは、実から和ろうそくをつくり、枝は和弓の材になる。武家らしい木。↓

 相模三川公園で落陽を眺めて、秋の休日をしめくくった。↓