「崖っぷちの男」

knockeye2012-07-20

 すごいひさしぶりにレイトショーで映画を観た。「崖っぷちの男」。小林信彦週刊文春で取り上げていたので、週末にでも観ようかと思っていたのだけれど、TOHOシネマ海老名の上映スケジュールでは、この週末、すでにレイトショーしかないので、じゃあ、きょう観ようかというわけ。
 ちなみに、「愛と誠」も小林信彦オススメなんだけれど、予告編で見る限り、あの感じは苦手だわぁやっぱり。三池崇史作品では、「ヤッターマン」は大正解だったし、あれも小林信彦推薦で観たのだけれど、「愛と誠」、挑んできますね、三池崇史。とかいうまに終わってしまったけど、いまのところ後悔もせず。
 「崖っぷちの男」は、アイデアで引っ張っていく感じ。そのアイデアは秀逸だし、出だしから小気味よいテンポで進むのだけれど、そのテンポのまま行っちゃったという感もあったな。
 途中で‘おっと’という展開になるのだけれど、そこで、ルーズベルト・ホテルという老舗のホテルと、新築の高層タワーの価値観の対比が、絵にうまく反映していなかったように思う。そのせいか、エド・ハリスの悪役がちょっと小物にみえる。
 その対比の不足をニックとジョーイという兄弟のでこぼこ感がおぎなっていた。なので、ダイヤとビルに絵的な説得力があればなと惜しく感じた。ダイヤがもっとあやしいというか、毒々しいというか、フレンチブルーみたいな、そういう魔力を見せつけてくれていれば、ラストのダイヤがもっと効いたと思う。
 人間関係は、こないだの「ハングリー・ラビット」みたいに、ちょっとウエルメイドな感じもするけど、それはいいの。だって、わたしは「グラッフリーター刀牙」にさえ突っ込まないのだし。
 アンジー役のジェネシス・ロドリゲスが、峰不二子的な訴求力がありました。ていうか、あれはもしかしたら峰不二子じゃないだろうか。日本のアニメは当代のクリエーターたちには潜在意識にすり込まれているのかも。
 「クローザー」のキーラ・セジウィックをひさしぶりに見た。オキュパイ・ウォールストリートのデモ、リーマンショック、そういう同時代の雰囲気を背景に成立している映画だと思うので、そこをもうちょっとパロディにしてくれていると、わたしの好みにドンピシャだったけれど。と、これは、キーラ・セジウィックの顔を見ていてそう思ったんだな、きっと。