「かんぽの宿」と大久保秘書逮捕とのつながり

今回の鳩山邦夫更迭まで、しばらく「かんぽの宿」にはふれなかった。とっくに決着がついたと思っていたからだ。
で、そう思ったのはいつの時点だったかと振り返って見たら、それは、どうやら、2月20日、「かんぽの宿」問題を受けた第三者検討委員会初会合の席で、西川善文社長が、
「経済情勢が悪化するなかで焦りはなかったか、地元への配慮は十分だったか反省すべき点はあった」
とあいさつした、そのときだった。
マスコミは今でこそ、この問題を
鳩山邦夫vs. 西川善文
という構図で報道しているが、最初はそうではなかった。
考えてみれば分かることだが、たとえ「かんぽの宿」が問題にまみれていたとしても、それが西川社長の責任になる筋合いはない。
このブログでは2月11日の記事にこう書いている。

グリーンピアのときはそれを作って運営してきた社会保険庁が批判された。 ところが今回は造った側の責任はまるで無視されている。

(?)と思っていたら、12日、鳩山邦夫かんぽの宿問題について 「西川善文社長の進退も含めて検討する」 と発表した。 なるほど、狙いはそこにあったかと納得。

いうまでもなく、総務省は郵政事業の監督官庁である。
もし、かんぽの宿に問題があるなら、総務省自身もその責任を負うべきは当然なのに、まるで被害者団体みたいな顔をして西川氏個人を攻撃した(総務省というより、鳩山邦夫のスタンドプレーだろうが)のは、その目的が「郵政民営化潰し」であったことのよい証拠だろう。
西川善文氏の進退について、鳩山邦夫が言及したと同時に、後任は「元郵政事業庁長官」の団宏明副社長という新聞発表さえされていた。
それが2月12日。
そして、鳩山邦夫だけでなく、麻生太郎森喜朗などの口から
「郵政4分社化見直し」
の合唱が聞こえ始める。
一方で、小泉純一郎のロシア訪問が2月14日から20日の日程で組まれていた。推測に過ぎないが、プーチンとの個人的な関係から見て、この訪ロをお膳立てしたのは森喜朗だろうと書いた。
つまり、まず「かんぽの宿」で西川氏を悪人にしたて、小泉純一郎をロシアに隔離している間に、「郵政4分社化見直し」を既成事実化する腹づもりだったのだろう。
しかし、小泉純一郎が、訪ロに先立って会見を開き、痛烈な麻生批判をぶち上げたことで、この計画は潰えてしまった。
13日、その会見の翌日、鳩山邦夫
「西川社長や(オリックスの)宮内義彦会長とけんかするとの意識はまったく持っていない」
と言わざるをえなかった。すでに後任人事まで発表していたのにだ。
その後、冒頭の西川社長の発言につながるわけである。つまり、反省の弁に見えて、じつは、勝利宣言だと私はとった。
鳩山邦夫は、その後、あのむさくるしいビルを歴史遺産だとか何とかワメキちらしてはいたが、見苦しいだけであった。
この一連の動きを見ると、小泉純一郎の洞察力がいかに鋭いかがわかる。竹中平蔵もこの間、積極的に鳩山邦夫を批判し続けていたし、その議論は確かに正しいのだけれど、かえって国民の反感を買った。
まあ、その程度の世論操作にあっさり引っかかる国民の方もどうかしていると思うけれど、しかし、それが現状である限り、その対応に政治家の力量が現れるのも事実だろう。
小泉純一郎が、定額給付金衆議院での再議決に欠席を表明したのが訪ロ中の19日。そして、その再議決が行なわれたのが3月4日。ご承知の通り、小沢一郎の公設第一秘書、大久保隆規東京地検特捜部に逮捕されたのは、その前夜、3月3日だった。
検察の政治介入という側面についてはくどいほど書いてきたのでここでは繰り返さない。この逮捕は、一方で、小泉純一郎欠席の政局への影響を、最小限にとどめる効果を狙ったという側面も指摘できる。あの時点では麻生政権の支持率はすでに10%を切っていた。もし、小泉純一郎に多数の同調者が出れば、麻生おろしは一気に加速していたはずだった。
小泉純一郎欠席の効果を殺ぐ一方で、民主党の支持率を失墜させる。それが狙いだとすれば、「与党には検察の手は及ばない」という漆間発言はむしろ当然で、及ぶはずがないし、現に及ばなかった。
官僚サイドは自分たちの傀儡を死守するためにはそこまでのことをする。道路公団改革の時には石井紘基議員の命を奪うことさえ躊躇しなかったのだ。
小沢一郎民主党代表辞任が5月11日。そして、大久保隆規の保釈が5月26日。「人質司法」という言葉があるが、まさに人質解放のように私には見えた。