といっても「高比良くるま」ではなく自動車の話。
2024年はEVの売り上げが失速した。単に踊り場なのか、それとも市場の流れが変わるのかはわからないが、いずれにせよ化石燃料に未来がないのは1970年代のオイルショックの時からわかっていた。その期限がどこまで伸びるのかに期待していても未来はない。
にしても、現在地上に溢れているガソリン車が全て電気自動車にとって代わった場合、はたして電気がまかなえるのかという素朴な疑問に答えてくれた人はいない。
そして、もし賄えたとしても、生活のエネルギーのほぼすべてを電気に頼ってしまっていいのかという素朴な疑問。クルマも鉄道もすべて電気となると、ひとたび電気が止まれば全物流が止まることになるが、その選択は正しいか?。オール電化という掛け声に乗ったあげく、東日本大震災の時にどうなったか?。それをまた、後戻りできないやり方で繰り返すのか?。
個人的には、自動車の動力源については、all-or-nothing、Winner Takes AllではなくEV、水素、あるいはエタノールなどの複数のエネルギーが共存するのが少なくとも当面あるべき姿ではないかと考えている。
そもそも電気自動車はガソリン車より歴史が古いくらいで、技術としては簡単。だからこそ後発のメーカーもプレーヤーになりえる。
ただ、電気自動車が普及しなかったについては、普及しないだけの理由があった。充電に時間がかかる、寒さに弱い、など、で、いろいろ付加価値をつけたとしても、その根本の欠点が解消されないなら、電気自動車にもあまり期待はできない。
テスラも結局、金持ちの道楽程度にしか普及しておらず、現状はクルマの未来像とは言い難い。
EVが普及してるのはむしろ中国で、これは、そもそもガソリン車の大メーカーが存在してなかったことが大きいだろう。
中国の大市場でEVが売れ続けていることは確かに世界中の自動車メーカーに対する圧力になるだろう。とは言え、EVに関しては中国の国内メーカーに価格で太刀打ちできるわけがない。すでにシェアを占領されているなら尚更のこと。となると、中国以外では売れないEVの開発に力を注ぐメーカーは少ないだろう。
しかも、中国の市場は、ひとりっ子政策のせいで、日本以上の急速さでこれから縮小してゆく。すると行き場を失った中国のEVがインド、アフリカなどのこれから成長する市場に溢れてくることになるだろう。
インドの大気汚染はひどいし、寒冷地でもないから、インドでのEVには可能性がある。しかし、その条件は、燃料電池車にとってもイーブンなので、次の覇権はインドの市場を取れるかどうかにかかっていると思える。
インドは中国と政治的には仲が良くはない。また、インドにはタタがあり、SUZUKIも古くからかなりのシェアを有している。となると、中国のEVもそう簡単に市場を独占するわけにいかないだろう。
水面下で何が起こっているかは知りようがないが、今は嵐の前の静かさというか、全てがフラットでどちらに転んでもおかしくないように見える。古くはVHSとベータとか、AppleとWindowsとかが覇権を競っていた頃に似ている。その歴史が示すことは、勝敗を決するのはハードの性能ではないってこと。
テスラは2027年までにロボタクシーを実現化すると発表している。タクシー会社でも作るのかというとそうではなく、これを個人で買うらしい。普段は自分が乗って乗らない時はクルマがタクシーで稼ぐっていう、何か投資マンションみたいなあやしい話。じゃあ、テスラ社がロボタクシーをバンバン街中に放置していけばそれで稼げるって話じゃないのか?。
それはともかく、クルマの勢力争いはEV、PHV、FCVなどハードの争いに見えて、実は、自動運転などのソフトウェアとサービスの争いこそ肝なのだということがわかる。
モノではなくコンセプトにどれくらいの説得力があるか、クルマではなくクルマ社会をどのようにスクラップアンドビルドしてゆくのかの構想がとれほど現実的なのかにかかっている。
そもそも若者のクルマ離れが定説になっている時点でクルマ社会は再構築を求められていた。日本は公共交通網って視点からもガラパゴス化していてクルマなしでも生活できる人口比は高いと思われる。ロボタクシーは天下を取りそうではない。
戦後のクルマ社会の雛型はアメリカ社会だった。世界中がアメリカのようでありたいと願ったってことになる。世界が今そう思っているかどうか、あるいはEVの発展を見て、中国のようになりたいと思っているかどうか。
再構築の時期には、誰がかつてのアメリカのような理想的な社会の雛型を示せるかが鍵となる。日本社会は、意外にも、そうなりえる資格はある。資格があるだけで現実にはそうなっていないが、社会インフラもあり、EVもPHVも FCVも自国で生産できる。だけでなく、水素運搬技術も世界に先駆けて開発している。残念ながら、ソフトウェアが弱くて政治家が無能ってあたりに負けフラグが立っているが。
以上を鑑みて個人的な意見を言わせて貰えば、近距離はグラフィットのような電動キックボード、遠距離はFCVとなっていくのが理想的に思えるがどうだろうか。