ジェベル200納車

 今日、バイク屋に行ってジェベル200を受け取ってきた。
(いま、こう書きつつ、‘あれ?昨日は何してたっけ?’と、ふと思ったが、昨日も仕事をしていたのだった。)
 藤沢の駅前からバスに乗り、‘諏訪神社’というバス停まで行くはずだったのだけれど、そこは、行動力のない行動派、なぜか‘諏訪神社前’というバス停に降り立った。
 ‘諏訪神社’と‘諏訪神社前’、確かに一字ちがうが、その一字は‘前’という字だし、その字は、あまり距離感を感じさせないのではないだろうか。たとえば、‘駅前’から‘駅’に移動するのに交通手段が必要なはずはないし。
 しかし、そういうことをいっても、実際に降り立ったバス停の景色に見覚えがないのだからどうしようもなかった。‘駅前’から‘駅’とは違って、‘諏訪神社前’から‘諏訪神社’は、タクシーで2500円くらいかかった。
 バイク屋という行き先を告げるついでに、運転手さんとバイクの話になり、ロシアツーリングの話になった。あれも、同じジェベル200でだったが、もう10年も前になる。
 「また行きたいですか?」
と聞かれたので 
 「そりゃ行きたいです」
と、即答した。でも、フリーター時代と違って、今は時間が自由にならない。
 怖い目に遭わなかったかと聞かれたときは、金をだまし取られた話はしたけど、殴られてテントを奪われた話は、ロシア人の風評被害を考えて、話さなかった。ロシアの人たちにはほんとに親切にしてもらった。
 バイク屋さんのご主人は、お姉さんが宮城県に住んでいるそうで、津波が家の目の前で止まって、間一髪、難を逃れたそうだ。
 「これで今から東北に行くんですか?」
と聞かれたが、
「いや、さすがに今日は行かないですけどね」
と答えたら、一瞬がっかりしたようだった。
 それで、たぶん、いますぐ東北に駆けつけても大丈夫なように、整備してくれたのだと感じた。
「ゴールデンウイークといっても、4日から、もう仕事なんですよ」
たぶん、週末くらいしか行けないだろう。
 何かしなくちゃ行けないというこころの焦りに比べて、何ができるのかという見通しは、漠然としていて、できそうなことは気が沈むほどちいさい。
 それでも「行くだけでも励ましになると思いますよ」
と、バイク屋のご主人は言ってくれた。
 とにかく今は、週末に‘行って帰ってこられる’というところから、実証していかなければならない。まだ、そんなレベルだ。なにしろ、3年もバイクにまたがってさえいないのだし、使い慣れた工具類はバハを盗まれたとき、一緒にごっそり持っていかれてしまった。
 少なくとも、タイヤレバーとパンク修理道具くらいは揃えておかないと、被災地で、JAFを呼んでいる場合ではないし。
 最寄りのコンビニまで、東名を越えるとき、ふと、見下ろすと、東へ向かうヘッドライトの列が目に入った。いつものことと言えばその通りなのだけれど、このうちの何台が東北に向かおうとしているのだろうと思うと、切なかった。