‘朝日文化’とは

knockeye2014-09-10

 今週の週刊SPA!で「もう朝日文化は壊滅してる」と、坪内祐三が発言してる。この人は、週刊朝日橋下徹についての部落差別記事を書いたときも、意見は、どちらかというと週刊朝日に同情的だったのだけれど。
 「朝日文化」というほどのものがあったかどうか知らないけれど、はてなブックマークで、最近、こんな記事を見つけた。

 読んで損はないので、一読していただきたいが、その上で、ちょっとどうかと思うことを書きたい。
 まず、全体としては何が言いたいのかというと、産経新聞および保守系メディアを批判したいみたい。
 そうではなくて、もっと大所高所に立った議論なんだという人がいるかもしれないが、とてもそう思えないというのは、

97年に結論が出ていた「吉田証言」の虚偽を朝日が今になって認めたというだけ

という言葉。
 97年に虚偽だと結論が出ていたのに、その記事をつい先月まで知らぬ存ぜぬで突っぱねてきた、そのことを「だけ」で済まされてはたまったものではない。
 実際、先月の検証記事を読むまで、吉田証言を真実だと信じていた人もいると思う。私自身の場合をふりかえっても、吉田証言がどうの、植村記者がどうの、なんていう知識はまったくなかったが、先月とは言わないまでも、つい近年まで、「奴隷狩りみたいなことが行われてたんだな」と、漠然と信じていたと思う。
 にもかかわらず、朝日新聞としては、「別に謝罪するほどのことじゃない」と言ってるわけ。それはどうなのよ。
 次に、この記事は、フジサンケイグループの故・鹿内信隆慰安婦についての発言と、経理将校のための教科書の記述を挙げて、慰安婦に軍が直接関与していたということを言おうとしている。
 ただ、その後にこうつづく。‘ようするに’で始まるからには、結論ととっていいんだろう。

 ようするに、保守系メディアはこうした事実を知っていながらそれをネグり、あらかじめ強制連行の定義を「軍が銃剣を慰安婦に直接突きつけて連行した」という非常に狭いものに限定し、それを否定することで、巧妙に情報を誘導してきたのである。朝日が歴史を捏造したというなら、産経をはじめとする保守メディアもまったく同罪なのだ。

 ‘あらかじめ強制連行の定義を「軍が銃剣を慰安婦に直接突きつけて連行した」という非常に狭いものに限定し、’
とは。だって、「軍が銃剣を慰安婦に直接突きつけて連行した」という吉田証言を、真実だつうことで、先月まで放置してたのは朝日新聞なんであって、そこに批判のフォーカスが当たるのは当然。
 「強制連行」を、「非常に狭いものに限定し」たのは、保守系メディアではなくて朝日新聞の虚偽報道じゃないですか。
 ‘それを否定することで、巧妙に情報を誘導してきた’
って、いやいや、ウソなんだから、否定しなきゃイカンでしょ、むしろ。何で、ウソをウソだと指摘しているだけのことで「巧妙に情報を誘導してきた」とか、いわれなきゃならないのよ。
 話は真逆でしょ。ウソをウソだと指摘する人たちを、極右だとか、ファシストだとか、レッテルを貼って、自分たちの虚偽報道に目が向かないように「巧妙に情報を誘導」し続けてきた。
 そして、次がひどい。

朝日が歴史を捏造したというなら、産経をはじめとする保守メディアもまったく同罪なのだ。

 朝日と産経が同罪なら?。だから、どうだっていうの?。なんか、いかにも正義の告発みたいな言い方しながら、結論は「同罪だからおあいこじゃん」ていう、まったく購読者無視の内輪の論理。びっくりしてしまう。
 結局、この人の興味は、右と左、具体的にいえば、産経vs朝日のたたき合いにしかない。本質には党派心しかない。朝日も産経も同罪だ」っていうなら、その「罪」についてこそ、検証しなきゃならないはずだが、この文章、それについてふれてる?。
 これを読んでて、「ああ、これが‘朝日文化’かなぁ」って思った。エリート意識で頭が固まって、自分を守ることだけに必死になってる。
 ‘保守系メディアはこうした事実を知っていながらそれをネグり’
って、「保守系メディア」が何をネグろうが、何を喧伝しようが、朝日新聞自体が真実を報道していれば、なんにも関係ないじゃないですか?。朝日新聞の方が影響力が大きいんだから。自分たちの虚偽報道を32年間もネグり続けてきたのは、朝日新聞のほうじゃないですか?。
 申し訳ないけど、一般の日本人にとって、この問題は、朝日と産経、右と左、そういうの関係ないわけ。
 第二次大戦中、アジアでおこった悲劇については、日本に100%の責任があるんだから、慰安婦の悲劇について、補償することも謝罪することも、大多数の日本人は、まったく反対しないと思います。
 でも、そこでウソ垂れ流してどうすんだよ。ウソに補償も謝罪もできるか。それが、朝日新聞が32年間デマを放置した、最大の罪なんじゃないですか。それを、何を血迷って、自分たちが正義の味方みたいな口の利き方してんだよ。
 ちょっと調べればわかるウソをろくに裏もとらずに報道して、それを32年間も放置したあげくに、「べつに謝罪するほどのことでもない」って、いまだに謝りません。
 これが今目の前にある事実でしょう。これについて、批判する気も、総括する気も起こらんってどうなんだろう。こういうのがたぶん、「朝日文化」といえば、「朝日文化」なんだろう。