2018-01-01から1年間の記事一覧

ルーヴル美術館展 肖像にテーマを絞った展覧会

ルーヴル美術館所蔵の肖像にテーマを絞った展覧会。 ちょっとしたついでに立ち寄っただけなんだけど、面白かった。特に、死と記憶のための肖像についての展示は、さすがにルーヴルだけあって厚みがあった。 これは紀元前16世紀ごろ、エジプトで埋葬されたミ…

『心と体と』

是枝裕和監督の『万引き家族』は、どうやらメガヒットになりそうな気配だが、『万引き家族』がカンヌのパルムドールなら、イルディコー・エニェディ監督の『心と体と』は、ベルリン映画祭の最高賞、金熊賞を受賞したのだから、もうちょっと脚光を浴びてもよ…

『パンク侍、斬られて候』ネタバレとまでいえない

石井岳龍監督、宮藤官九郎脚本、綾野剛主演『パンク侍、斬られて候』は、今までのところ、今年観た日本映画のNO.1かもしれない。小津安二郎監督の紀子三部作とどうかと言われると困るが、あちらは封切りが今年じゃないという逃げが効くし、『万引き家族』と…

『ゲティ家の身代金』

リドリー・スコット監督は、強い女をセクシーに撮るについての、深い欲求があるんだと思う。 今回の場合は、それが、息子を誘拐されたバツイチ女盛りの母親で、ミシェル・ウィリアムズが演じている。今までこの女優さんをセクシーな目で見たことがなかったん…

『東京物語』4K

小津安二郎監督の、いわゆる紀子三部作の掉尾を飾る『東京物語』デジタル修復版を、角川シネマ新宿で。しかも、香川京子のトークショーも観られた。 紀子三部作といいながら、紀子という名前の主人公を原節子が演じているだけで、紀子は同一人物ではない。『…

鎌倉の集藍

朝のうちの雨が、映画館を出ると晴れ渡っているのみならず、ちょうど今晴れたところです、みたいな風が肘のあたりをすっと撫でていったので、ちょっと予定を変更して鎌倉に集藍を見に出かけた。 鎌倉の集藍というと、明月院ってことになるのだが、あそこはこ…

『万引き家族』のteach-in

小津4Kの『東京物語』に香川京子が舞台挨拶に来ていて、小津安二郎監督に「僕は世間のことには関心がないんだよね」と言われたという思い出を語っていた。それを聞きつつ、でも、それは、小津安二郎監督の演出だったかもなと思ってみた。というのは、当時…

『晩春』反戦映画としての

新宿ピカデリーで小津4Kが始まっている。一ヶ月ほど前に観た『晩春』だったけれど、あの時はちょっと傷みすぎていたので修復されたものをもう一度観た。 昭和24年に封切られた『晩春』は、正確に言えば、日本映画ではない。私たちは昭和25年に日本が独立を…

ジョルジュ・ブラック展 メタモルフォーシス

ピカソとブラックがキュビズムを始めたことは間違いない。どちらが先だったかは、ハッキリ知らないが、しかし、このふたりのキュビズムはずいぶん違う印象がある。 たとえば、これはよく言われることらしいが、ピカソの《アヴィニョンの娘たち》はキュビズム…

『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています』

李闘士男監督は『デトロイト・メタル・シティ』がすごくよかった。原作の漫画が面白かったには違いないけれど、面白い原作の映画化が必ず成功するとはかぎらないわけで、あれはやっぱり見事だったと思う。 『神様はバリにいる』は、尾野真千子にコメディエン…

難民鎖国日本

今日、新宿で映画を観た帰り、ロマンスカーに乗って、radikoでバナナムーンGOLDを聴きながらヘラヘラ笑ってたら、となりのおばさんに、 「お楽しみのところすみませんが・・・」 と、スマホの画面を示されて、 「この『トランプがメキシコ移民を日本に』って…

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

サリー・ホーキンスとイーサン・ホーク。 モード・ルイスはカナダに実在した絵描きさんだけれども、分かっているところと知られていないところがあるらしいので、この映画を観ただけのわたしが、事実関係についてあれこれ書くのはバカげている。 映画の最後…

長谷川利行展

虹の画家といえばわかる人も多いと思う靉嘔の回顧展が2012年にあった。そのとき印象深かったのは「これでもう絵を描かなくてもいい」という言葉だった。 それは靉嘔が虹を始めたきっかけについて書いた文章で、線やフォルムは過去の巨匠たちの焼き直しにしか…

『ザ・スクウェア 思いやりの聖域』

この映画はリューベン・オストルンド監督の『フレンチアルプスで起きたこと』に続く映画。『フレンチアルプスで起きたこと』は、普段はなかなかくすぐられないところをくすぐられる映画で、一昨年のカンヌの話題をさらい、ハリウッドリメイクも決定したりと…

日大闘争についての池上彰の記事

週刊文春 2018年 6/14号 [雑誌]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 雑誌 > 趣味・車・ペット雑誌ショップ: 楽天ブックス価格: 420円 週刊文春の今週号に池上彰が書いている「日本大学は変わったのか?」を読んでびっくりした。 途中のサブタイトルに「五〇年前…

『30年後の同窓会』

リチャード・リンクレーター監督は『6才のボクが、大人になるまで。』っていう映画を観て大好きになった監督。イーサン・ホークが父親役、パトリシア・アークエットが母親役、そして、その息子役のエラー・コルトレーンが6才から18才になるまでの12年…

『犬ヶ島』

「小説は物語からの後退」という吉田健一の言葉を紹介したが、近松秋江などの私小説をそうした「小説」の最たるものだとしたら、『ムーンライト・キングダム』や『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソンの映画はまさしく「物語」だなと思っ…

日大フェニックスと抑圧の移譲

日大アメリカンフットボール部の監督とコーチが、対戦相手の選手にケガを負わせる目的で、配下の選手に反則を強要した事件について、いろんな人がいろんなことを言っている中に、北野武がTVタックルで、 「昔は就職に一番良かったのは応援団だったんだよね…

『シューマンズ・バー・ブック』

モンゴロイドのひとりとして、私の遺伝子はアセトアルデヒド分解酵素を生成できないために、酒を含むすべての楽しみから締め出されている。呑めないから酒が嫌いになり、嫌いなわけだから、酒が飲めないことを悔しいとも惜しいとも思わないでいたが、吉田健…

『万引き家族』ネタバレ、観る前に読まないこと

何年か前、村上龍が、人間の欲望から、セックスしたいとか、美味いもの食いたいとか、いいクルマ乗りたいとか、そういうのの要らないものを削っていくと、最後に残るのは家族なんじゃないかっていうようなことを言ってたことがあって、その時はピンとこなか…

サヴィニャック展

練馬区立美術館で、これはもう四月のはじめころなんだけど、サヴィニャック展、「パリにかけたポスターの魔法」を観た。意外にすごく盛況で図録を買うのにずいぶんならばなければならなかった。 残念ながら撮影禁止だったんだけど、もとはと言えば町中に貼っ…

『ラブレス』

観る前に聞いてた情報から予想していた内容とそんなに違わなかった。 できちゃった結婚から12年、完全に冷え切ってる夫婦が、別れるのはよいとして、子供は?、ってことで押し付けあってる。 サイテーなんだけど、サイテーさがこっちの予想を超えてこない…

『タクシー運転手』

韓国の映画。全斗煥大統領時代、戒厳令下で起きた光州事件の実情を世界に報道した、ドイツ人のジャーナリストを、ソウルから光州へ、そして、光州からソウルへと運ぶタクシー運転手をソン・ガンホが演じている。 最後に、映画のドイツ人ジャーナリストのモデ…

池口史子展

四谷三丁目の愛住町にある愛住館に、池口史子の絵を観に出かけた。この美術館はオープンできるかどうかちょっともめてるみたいな報道もあったので気にかけていたが、無事にオープンしていたらしい。 池口史子(ちかこ)の絵は、以前、松濤美術館で個展を観て…

圧巻!岡村桂三郎展 異境へ

いま、平塚市美術館で開かれている「岡村桂三郎展 異境へ」は、展示室を埋め尽くして列なる杉板の屏風に、何はともあれ圧倒される。足を運んで観た方がよい。 併設されている「21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展 アンディ・ウォーホルから奈良美智…

『フロリダ・プロジェクト』

子供目線で撮影しているからなのは分かっているが、ローアングルの抒情的な画面が美しく、そこで徐々に進行していく破滅がウソのように感じられる。それは、子供たちにとっては、目に見える光景だけがホントで、自分たちが破滅に向かっているってことは分か…

『悪人正機』

悪人正機 (新潮文庫) [ 吉本隆明 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 文庫・新書 > 文庫 > その他ショップ: 楽天ブックス価格: 594円 なぜこのタイトルなのかわからないが、糸井重里が吉本隆明にいろいろなテーマで語ってもらってそれを文字に起こしたような…

『大英博物館プレゼンツ北斎』

日本の美術愛好家からすると、葛飾北斎に対する西洋での評価は、日本美術全体を考えると、バランスを欠いているようにも見えるが、19世紀、ジャポニズムのインパクトは、西洋美術史の特異点として、忘れがたいのだろう。 この映画は、2017年夏に大英博物館で…

『ナチュラル・ウーマン』

『ナチュラル・ウーマン』ってチリの映画。アカデミー賞外国語映画賞をチリ映画として初めて受賞した。 私は、子供の時に、男に性的ないたずらをされたので、LGBTのうちのGだけは、カラダが寄せ付けない。というより、同性に体を触られるだけでも緊張してい…

『今を生きる親鸞』

今に生きる親鸞【電子書籍】[ 吉本隆明 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 語学・学習参考書 > 語学学習 > その他ショップ: 楽天Kobo電子書籍ストア価格: 660円 吉本隆明の『今を生きる親鸞』という本がデジタル書籍で手に入ったので読んだが、『最後の親鸞』…