「ココ・アヴァン・シャネル」

knockeye2009-10-03

「ココ・シャネル」と「ココ・アヴァン・シャネル」は見比べることにしていた。
さてどちらがよかったか。
こちらにはシャーリー・マクレーンの貫禄が欠けているのだから分が悪い。映画を動かしていくドラマトツルギーの力も「ココ・シャネル」に較べると弱い気がした。メリハリというか。
ただ、その分「ココ・アヴァン・シャネル」の方がお約束の感じがない。情報がまだ一次情報に近く生々しい。脇役がステレオタイプにはまらず、特に、成功のきっかけを作ったエチエンヌ・バルザンが魅力的。
この映画に関しては、彼を主役だと思ってもいい。孤児院出身のひとりのお針子の成功物語は、誰よりも彼にとってこそ、もっともドラマチックであるはずだから。ココ・シャネル自身にとってよりも。
だから、自らの成功を見下ろしながら、鏡張りの美しい螺旋階段の上に座るココのその孤独。その成功の孤独をラストにもっと語ることができたら(もちろんそれを匂わせてはいたけれど)、ぐっとしまったのではないかと思う。それは、バルザンの孤独と美しい対照を描くはずだから。