きつねのはなし

knockeye2006-11-19

きつねのはなし

きつねのはなし

朝から雨が降りそぼる。起きたり眠ったりうつうつすごす。きのう世田谷をさまよったので疲れているらしかった。この一年ほどの体力の落ち方ははなはだしい。
『きつねのはなし』には、京都の具体的地名が多く出てきてなつかしい。文章に、京都が舞台の怪異譚にふさわしい風格がある。
表題作「きつねのはなし」は、骨董店で働く学生バイトが主人公。もののやりとりがスリリング。近代はものをすべて均一の貨幣価値に変換してしまったが、その変換はヴァーチャルな操作であって、もののリアリティーを知りえたわけではない。そういうモノのいのちが京都に息づいていたら、何か面白い物語が生まれそう。傾向としては、中島らもの『ガダラの豚』とか、吉田健一の『金沢』を想起させる。雨の日の読書には、まことににつかわしい。