雪で思い出した、は、こじつけだけど、こないだオペラシティアートギャラリーで観た谷川俊太郎展と併催されている常設展は、ここのコレクションとしてはめずらしく、センチメンタルというか、ウエットというか、懐古的な趣味の絵を並べていた。二川幸夫って人の古民家を撮ったモノクロームの写真、そして、川瀬巴水の版画。
スティーブ・ジョブズは川瀬巴水が大好きで、自身コレクターでもあったそうだ。Appleの創業者にして時代の変革者であったジョブズの趣味としては、呆気ないほどフツーな絵の好み。少なくとも、川瀬巴水は日本画の変革者ではなく、むしろ、反動的だととられてもしかたのない絵だったと思う。巴水の兄弟子であった伊東深水は、「広重の焼き直しにすぎない」と評していたようだ。
ただ、まあ、その分、ケレン味がないというのか、伝統だの、美術史だのは、すいませんって感じのみずみずしい素人っぽさを最後まで失わなかった。というか、最後まで素人ぽかった。そういうアマチュアリズムがスティーブ・ジョブズと共鳴しているのかもしれない。
そして、日本情緒、リリシズム。とにかく、ずらっと並んでいる絵を観ていくと、三分の一が雨、三分の一は雪、そんな感じで、ほほえましくなる。
川瀬巴水が日本国内より海外で人気があるのは、たぶんだけど、渡邊庄三郎が熱心に取り組んでいた新版画に巴水がうまくはまったことが大きいと思う。渡邊庄三郎は浮世絵の販路を海外に広めたのみならず、海外の画家の絵も、日本の彫師、摺師の手で浮世絵にしていった、近代の蔦屋重三郎ともいうべき面白い人だったみたい。
ポール・ジャクレーのこの無国籍かつLGBTな感じが、戦前の作品であることは注目に値するのではないか。
下の作品はバーサ・ラム。
こちらはエリザベス・キース。