『天気の子』にうちひしがれる

 映画はよく観る方だけど、アニメはあまり観ない。
 アニメは全編これ絵なわけだから、全く個人的な好悪にすぎないが、ダメだこりゃっていう絵を2時間見せられるのは苦痛。
 そういう人間にとって、宮崎駿引退と同時に立ち現れた『君の名は。』は、イチロー引退と引き換えに出現した大谷翔平のように見えた。
 『天気の子』は、その次回作なわけだから、二年目の大谷翔平のように、「まあ、大目に見ようではないか」くらいの、根拠のない上から目線で臨んだのであるが、まったく、こてんぱんに打ちひしがれた。
 高い次元で、娯楽性と作家性が両立している。本来、すべての商業芸術でそうあるべきなんだが、往々にして、娯楽性と作家性の、どちらかがどちらかのエクスキューズになっていることがあり、そうなると、悲惨なことになる。
 『君の名は。』が、世界的なメガヒットになったわけだから、もし、新海誠が凡庸な作家なら、そういうことも起こり得たわけじゃないですか?。しかし、ネットで見かけたインタビューでは「『君の名は。』で怒った人を、もっと怒らせてやろうと思った」と語っていて、「じゃ、大丈夫なんだわ」と納得せざるえなかった。
 かなり特殊な世界観なんだが、それを絵の説得力だけで成立させる、力わざめいた画力もあいかわらず見事だと思った。晴れから雨へ、雨から晴れへと移り変わる天気の描写を見るだけでも観に行く価値がある。
 それでも、というか、しかも、というか、これがかなり堂々と正統的な少年と少女の冒険譚であることに注目するべきだと思う。決して、サブカルチャーを志向していない。だからこそ、とくにアニメに興味のない観客にまで届くのだと思う。

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