「フィルス」

knockeye2013-12-01

 「トランス」のジェームズ・マカヴォイが主演する「フィルス」を、映画が千円の日なので、観にいった。シネマライズっていう、渋谷のスペイン坂を上がりきったところにある「ジス・マスト・ビー・ザ・プレイス」を観た映画館だけど、ちなみに、この「スペイン坂」って、パルコが勝手につけたそう。ふつうの坂道ですけどね。
 どんな映画か、なんにもわからずに観にいったんだけど、スコットランド人による、スコットランド風の上質かつ、お下劣なコメディーだった。
 だから、松本人志の「R100」なんかは、こういうジャンルのコメディなんで、テレビのヴァラエティーなんかで、フリがあって、ボケがあって、ツッコミがあって、オフ気味のスタッフの笑いがかぶさって、みたいな笑いしか、コメディーじゃないと思っている客層には、やっぱり無理だったんだな。
 「フィルス」は、ジェームズ・マカヴォイの狂気がすべてという感じ。狂気というか過剰な感じというか。
 プロットの骨格は意外に単純という感想。みんないい人に見えてしまうのは、価値観の対立がないからかな。価値観はゆるがなくて、少しの逸脱があって、修正がおこなわれる、くらいなので、緊張が持続しない。
 日本人としては、最初に殺される日本人、あの遺族くらいは登場させてほしかった。異文化の視点があると、このはちゃめちゃぶりがもっと笑えたと思う。誰がいちばんひどい目にあったかというと、あの日本人だし。あれをもうちょっと引きずり回さななかったのは、やさしいともいえるし、そこまで視野が広くなかったということだろうけど、主人公を完全に客体化できていないってことなんだろうと思う。
 それ考えると、「凶悪」のリリー・フランキーのあの狂気はやっぱりすごかったな。