『ねむれ巴里』

昨日の余勢を駆って『ねむれ巴里』を読んだ。
ねむれ巴里 (中公文庫)
他人事ながらひりひりする。人が生きている「味」には、それ自体でかなりクセがあって、その上に意味だの主義などを付け加えることは、素材の味を知らない舌の未熟さなのかもしれない。
それにしても森三千代の魅力的なこと。男女の馴れ合いの深さは、言葉でくくってしまえない。彼女がブリュッセルに発つあたりでは、こっちまで喪失感をおぼえたほどである。
ちなみに、中公文庫の表紙は金子光晴の手になる巴里の絵だ。こういう絵を売って歩いたかと思うと感慨深い。