2016-01-01から1年間の記事一覧

「或る終焉」

「或る終焉」は、安楽死を扱った映画。安楽死は重いテーマではある一方で、小説、テレビ、映画などで使い古されたテーマでもある。森鴎外の「高瀬舟」なんかをクラスで読まされて、議論なんかさせられたり。 つうわけで、テーマに新味はないわけだし、おまけ…

「或る終焉」、「さざなみ」

「教授のおかしな妄想殺人」

ウディ・アレンの前作「マジック・イン・ムーンライト」を「ウディ・アレンのものとしては少し落ちる」と、小林信彦が評していた。小林信彦の頭の中には映画のビッグデータが保存されているから、そう言われるともう何も言えない。 今回の「教授のおかしな妄…

根津美術館、拙宗等揚

まるで日記みたいな書き出しになるけれど、先週の日曜日は、朝がたうすら寒いし、天気予報は終日曇りがちというしで、ジャケットを着て出かけたが、なぜか、根津美術館の庭に出ているあいだは晴れて、汗をかいてしまった。半そで短パンで散策している外国人…

ヘイトスピーチ解消法成立について

ヘイトスピーチ解消法の成立を受けて、さっそく、川崎のヘイトデモを中止に追い込むなど、罰則規定のない法律ながら、ザル法になることなく、機能し始めているようでひとまずホッとしているが、この成立については、ちょっと気にかかっていることがあるので…

小西真奈、奈良美智、高島野十郎

ところで、先日の続きになるけれど、横浜美術館の常設展は、写真撮影可になっている。日本国内では、そういう美術館はあまりなく、関東では、ここと、東京国立近代美術館と、トーハク、国立西洋美術館のそれぞれ常設展くらいだろうか。 新収蔵品と思うけれど…

複製技術と美術家たち

わたくしあいもかわらず、休みの日になると、美術展に出かける日々なのだけれど、この5月からは仕事がやたらと忙しく、それについて、ここに書くヒマも体力も残ってない状況が続いている。 それでも、とにかく、こないだのルノワールの絶筆だけは、あれを目…

「ひそひそ星」

園子温監督の最新作「ひそひそ星」は、すばらしかった。 一説によると、映画評はこういう書き方をしてはいけないのだそうだ。「良い」だの「悪い」だの言葉を使わずに「良さ」や「悪さ」を伝えなければならない。 なので、「・・・はすばらしかった」の言い…

ルノワール展

こないだピカソの《アヴィニョンの娘たち》について言い及んだのに、肝心の絵をアップしなかった。美術館で絵葉書を見かけたので買ってきた。 でも、今、国立新美術館に展示されているルノワールの裸婦《浴女たち》は、《アヴィニョンの娘たち》と同じくらい…

「海よりもまだ深く」

是枝裕和監督の最新作の「海よりもまだ深く」というタイトルは、テレサ・テンの歌詞の一節から取られている。劇中歌にも使われている。このやり方は以前の「歩いても、歩いても」が、いしだあゆみの歌から取られていて劇中歌にも使われているのと同じだし、…

「ヘイル、シーザー!」

コーエン兄弟とジョージ・クルーニーといえば、「バーン・アフター・リーディング」のすべりっぷりを思い出す人も多かろう。「ファミリーツリー」を思い出しても、ジョージ・クルーニーにコメディアンの資質があるとは思いがたいのだが、多分、コーエン兄弟…

「ガルム・ウォーズ」

押井守の書くセリフを字幕にするなんて不可能という鈴木敏夫の判断で吹き替えのみの公開らしい。 押井守のセリフは、まるで、神道の「祝詞」みたいなもんだなと思って、英語のセリフだと、どんな具合に受け取られるんだろうと、つまり、どんな具合にニュアン…

「殿、利息でござる」

中村義洋っていう映画監督は、「ジャージのふたり」とか、「ポテチ」とか、「ジェネラル・ルージュの凱旋」とか、コメディーのセンスが上質。それに、「アヒルと鴨のコインロッカー」もそうだけど、ちょっと映画化できないんじゃないかという感じの原作をシ…

ピカソ、天才の秘密

あべのハルカス美術館で、「ピカソ、天才の秘密」っていう展覧会がやってる。初期のピカソ、キュビズムに至るまでの作品を集めている。 これなんかまるでロートレックだし、 これなんかは、パステルというせいもあって、まるでドガみたいだ。 ピカソの神童伝…

安倍・プーチン、ソチで会談

ゴールデンウィークの間に、安倍首相が、ロシアのソチに行って、プーチンと話してきた。安倍首相とプーチン大統領の在任中に、先の戦争の落とし前をつける意思であるようだ。 1945年に終わった戦争の事後処理がまだできていないこと自体が、やっぱり異常だと…

「マジカル・ガール」

「マジカル・ガール」は、3月の公開からもうだいぶ日が経っているし、観たい人は観たんじゃないかと思う。有楽町のヒューマントラストだったかで、けっこう行列だったのを尻目に殺して、その日は、ニコール・キッドマンの「虹蛇と眠る女」てふ、オーストラリ…

イチロー逆転タイムリー

イチローが、逆転の2点タイムリー。

『映画にまつわるXについて』

映画にまつわるXについて (実業之日本社文庫)作者: 西川美和出版社/メーカー: 実業之日本社発売日: 2015/10/23メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 西川美和の『映画にまつわるXについて』を読んだ。 「ゆれる」と「夢売るふたり」についての話が…

「スポットライト 世紀のスクープ」

「スポットライト」は実話なので、映画としてどうこう言うことと、その映画が描いている事実についてどうこう言うことが、混乱するのは避けられないかも。 例えば、レイチェル・マクアダムスは、「誰よりも狙われた男」の方がチャーミングだった、とか、マー…

「ルーム」

レニー・アブラハムソン監督が、「ルーム」の前に撮った「フランク」は、観ようかどうか迷いつつ、結局、見逃してしまった。マイケル・ファスベンダーがずっとかぶりものをしている、イタそうなミュージシャンを演じていた。 予告編を見ただけでは、ホントに…

「グランドフィナーレ」

最近に観た映画では「ルーム」、「スポットライト」、「グランドフィナーレ」が良かった。その中でどれか1本だけお薦めするとなると、「グランドフィナーレ」だろう。 この監督のパオロ・ソレンティーノが「きっとここが帰る場所」っていう、ショーン・ペン…

黒田清輝

ちょっと書きかけたけど、上野の東京国立博物館で、黒田清輝を観てきた。 私個人は、生意気盛りに、明治以降の日本の絵なんて、全部ひっくるめてろくでもないと、多寡をくくっていた時期もあった。現にそう思っていた。 昔は、その頃の日本人の絵を、邯鄲の…

イチローはすごいなって話

今更ながら、イチローはすごいなっていう話を書いとく。 16日のブレーブス戦で、日米通算25年目のプロ野球人生初の、「代打の代打」を送られた。代打で打席に立ったんだけど、ブレーブスの監督が投手を左投手に交代させたんで、マーリンズの監督は、イチロー…

箱根 彫刻の森美術館 横尾忠則「迷画感応術」

熊本と言えば、気になるのは吉村さん。ネットが今みたいに悪意に汚染される前、バイクツーリストは一緒にキャンプしたり、写真を見せっこしたりしてつるんでいた。ゆるいつながりだし、いつの間にか解消したし、それでいいと思っているのだが、ただ、残念な…

ボッティチェリ

鎌倉に行った翌日曜日は、上野に黒田清輝とカラヴァッジョを観に出かけた。 これは、先週予定していたのだけれど、うすら寒い天気でうっかり垂れ込めて過ごしてしまったのだが、やっぱり、ポジティブでなきゃいけないというのは、せっかく東京国立博物館の庭…

鎌倉 牡丹園のリス

ないことに、半日ではあるが、土曜日出勤になってしまった。皮肉なほどよい天気なので、鎌倉にでも、名残の花を観に出かけた。 今年、段葛を改修したとは聞いていたけど、沿道の桜まで全部植え替えたとは知らなかった。だったら、ソメイヨシノはやめてイトザ…

『絶望』

絶望 (光文社古典新訳文庫)作者:ナボコフ出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/04/24メディア: Kindle版 ナボコフがアメリカに渡る前、ドイツに亡命中、まだロシア語で書いていた頃の小説。 若島正が翻訳したのを読んで『ロリータ』ってこういう小説だったん…

「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」

「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は、ほんとは「ピロスマニ」と同じ日に観た。 「ピロスマニ」を画家の伝記映画だとすれば、「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は、カメラマンのドキュメンタリーということになる。 でも、これはたとえば、アンリ・カル…

オリンパスSH-2で龍峰寺の桜

花冷えというのか、どうにも意気沮喪する天気で出かける気にならずにいたが、染井吉野も満開の頃だそうなので、オリンパスSH-2で龍峰寺の桜を撮りに行った。 ただ、朝からうすら寒いどんよりした空模様だったので、あっという間に暮れてしまったが。 さすが…

「放浪の画家 ピロスマニ」

「ピロスマニ」てふ映画は、グルジア改めジョージアで1969年に制作され、日本では1978年にロシア語吹き替え版が公開されたそうだが、どういういきさつか知らないけれど、今年、37年ぶりに、グルジア語オリジナル版をデジタル・リマスターしての再…