映画

『イニシェリン島の精霊』

『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督の最新作。 『スリー・ビルボード』は、公開当時、宮藤官九郎が惚れ込んで、ギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』とアカデミー作品賞を争って負けた時は、"俺の"『スリー・ビルボード』…

『ホイットニー・ヒューストン I wanna dance with somebody』『空の大怪獣ラドン(4K)』

去年の最後に観た映画と今年最初に観た映画。 『ホイットニー・ヒューストン・・・・』の方は、楽曲はオリジナルなので、それだけでもいいかなと思って。 この手の映画でけっこうな頻度で出くわすのが最低な父親。例を挙げれば、エイミー・ワインハウス、ブ…

『SHE SAID』『パラレル・マザーズ』

週末に『SHE SAID』と『パラレル・マザーズ』をみた。 どちらも重いテーマをエンタメに昇華させた、満足感の高い映画だった。 特に、『SHE SAID』の方は、エンドクレジットに「herself」と書かれている人が3人もいたのが感動的だった。特に、アシュレイ・ジ…

『帰ってきた宮田バスターズ(株)』

『帰ってきた宮田バスターズ(株)』って映画を観たら、たまたま舞台挨拶みたいなことがあった。監督と女優さんとナゾのトカゲみたいな人(映画『FRANK』みたいなノリの)がしれーっと始めたのだった。フツーは司会がいると思うんだけど、司会なしでなんとな…

『MEN 同じ顔の男たち』ネタバレ

『MEN 同じ顔の男たち』 アレックス・ガーランド監督って人は独特の世界観で、監督デビュー作の『エクス・マキナ』は優品だった。アリシア・ヴィキャンダルもあれが一番印象的だったのではないか。というのは、本当に作り物みたいに綺麗なので。『トゥームレ…

『THE FIRST SLAM DUNK』

マヂカルラブリーのふたりがラジオで絶賛していたので観に行った。 昔、井上雄彦がテレビに出ていて、スラムダンクを描き始めた頃のことを語っていた。それまでくすぶっていたらしいのだが、「自分はまだバスケを描いていない」という、まだバスケを描いてい…

『ある男』ややネタバレ。

個人的な石川慶監督経験は最悪。『蜜蜂と遠雷』『アーク』と2作品観ているけれど、『蜜蜂と遠雷』は先に恩田陸の原作を読んでいたので、原作との落差がひどすぎた。これはまあ原作ファンあるあるだろうから仕方ないとはいえ、映画化不可能と言われている大ベ…

『土を喰らう十二ヵ月』 ネタバレあり

『土を喰らう十二ヵ月』を撮った中江裕司監督って人は変わりものみたいだ。水上勉のエッセイを映画にすること自体が、少しはユニークだが、それをさらに沢田研二主演。原作を読むと、その当時の水上勉は現在の沢田研二よりひと回り若い。だと、役所広司とか…

『PIG/ピッグ』

奇しくも『ザ・メニュー』に続いて「伝説のシェフ」の物語。この映画はマイケル・サルノスキという人の長編映画監督デビュー作だそうだ。 同じニコラス・ケイジ主演でも園子温のハリウッドデビュー作『プリズナー・オブ・ゴーストランド』の悲惨さと比べると…

『やがて海へと届く』ネタバレ

昔は、観た映画、行った展覧会、備忘録のように書き留めていたが、最近は観たけど書き忘れるものも増えてきた。 『すずめの戸締まり』を観て思い出したのは、浜辺美波と岸井ゆきのの『やがて海へと届く』。6月に観たんだけれども、あれも東日本大震災を扱っ…

『オルガの翼』『すずめの戸締まり』

『オルガの翼』は、今の戦争につながるユーロ・マイダン革命の頃のウクライナを舞台にしている。2013年11月ウクライナ政府がEUとの連合協定交渉を停止した事に抗議する数十万の市民たちが広場に集まりはじめた。これに対してヤヌコーヴイッチ大統領は集会の…

岡本太郎展

岡本太郎という人は画家であり、造形作家であり、写真家であり、文章家でもあった。先月、東京都美術館で岡本太郎展を観た。12月28日までやってる。 太陽の塔のイメージのせいかもしれないが、岡本太郎は画家であるよりも造形作家の印象が鮮烈。 たとえばこ…

『花様年華』

ウォン・カーウァイの4Kレストアの『花様年華』を観た。 「キサス、キサス、キサス」を唄っているのはナット・キング・コールだそう。 セクシー、完璧、カメラアングルだけで全てを語る。結局、何も起こらないのがこんなにセクシーとは。 www.youtube.com廊…

『窓辺にて』ややネタバレ

つかこうへいが、ダスティン・ホフマン主演の『卒業』のラストについて、結婚式の教会から花嫁を奪われる花婿の気持ちにならずにいられない、みたいなことを書いていた。ダスティン・ホフマンの行為は今ならもちろん大炎上案件だろう。つかこうへいの定番ネ…

『暴力をめぐる対話』『PLAN75』

この週末に『暴力をめぐる対話』と『PLAN 75』を観た。 『暴力をめぐる対話』は、フランスで続いている「黄色いベスト(gilets jaunes)」のデモの現場で撮られたスマホの映像を観ながら、いろんな人が対話するドキュメンタリーで、フランスでは、コロナ禍の…

『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』

先日、『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』を観た余韻もあって、『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』を観た。 ブライアン・ウィルソンについては、ポール・ダノとジョン・キューザックがそれぞれ老若の彼を演じた『ラヴ&マーシー』という映画…

『川っぺりムコリッタ』

荻上 直子監督といえば『かもめ食堂』と『めがね』でカルト的なファンを獲得した、作家性の強い映画を思い浮かべる。今回のポスターにも「荻上直子「かもめ食堂」」とクレジットされている。 『かもめ食堂』、『めがね』に『プール』を加えて三部作と一般に…

『渇きと偽り』

オーストラリアの映画で、知ってる役者さんは一人もいないんだけど、そのせいで、フラットな視点で見られて、推理ドラマとしてはそのメリットがある。 それに、オーストラリアの片田舎っていう、実際はどうか知らないんだけど、確かに、西部劇的な、開拓時代…

revolution+1

『revolution+1』がまだ未完成の状態で一旦公開されたについての興味深い動画ふたつ。www.youtube.comwww.youtube.com

『さかなのこ』ネタバレかも?

のんは29歳だそうだ。この映画では男子用の学生服、いわゆる学ランを着てさかなクンを演じている。のんがさかなクンを演じると聞いて、主人公を女性にしたんだなと思い込んでいたけど違った。これはすごいキャスティング。別に、男っぽくふるまおうとすらし…

『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』

ジョージ・ハリソン この映画が成立した経緯が面白い。監督のポール・サルツマンという人はカナダのいわば二世タレントみたいな人で、当時からテレビで活躍していた。 そういう彼が失恋をきっかけにインドに出かけてみようと思った。当時の西欧の若者はそん…

『ブレット・トレイン』

マリアビートル (角川文庫)作者:伊坂 幸太郎KADOKAWAAmazon 伊坂幸太郎原作映画といえば中村義洋を思い出す。が、彼だけでなくいろんな監督に映画化されてる、なんか分からんが、映像作家を刺激する小説家みたい。 それが今回はブラッド・ピット主演でハリウ…

『ウクライナから平和を叫ぶ』

2015年にウクライナとロシアの紛争地域を取材したドキュメンタリー。 予告編にもあるのだけれど、親ロ派のおばあさんが、ウクライナ兵がハーケンクロイツをつけてナチス風の敬礼をしていたなどとカメラの前で語る。もちろん、全ての証言の真偽を確かめる術は…

『LOVE LIFE』

深田晃司監督はとにかく『淵に立つ』がmasterpieceに間違いなく、観てない人は是非観てほしい。信頼できる作家だとわかるはずだ。 ニーチェの「反キリスト者」にも見られるようなキリスト教批判を、頭の片隅に置いていないキリスト教徒は狂信家と言っていい…

『この子は邪悪』

低予算だけれども、奇想天外ではこちらも『NOPE』に負けてない。ネタバレの書きにくさではこちらの方が上かも。というのは、あらすじだけ言うと「んなバカな!」感がこっちの方が強い。ところが、映画で観ると「あるかも」と思わされてしまう。 監督、脚本の…

『私は最悪』

この映画は 私は最悪ここから始まる。大学に入って辞めて、みたいなところから始めないのはさすがだと思った。 パートナーの新刊披露パーティーで所在なげにしているこの女性が主人公なのであって、この女性のクロニクルではない。幾多の名作と同じく、いき…

『荒野に希望の灯をともす』

中村哲医師のドキュメンタリー映画、劇場版『荒野に希望の灯をともす』が、あつぎのえいがかんkikiにて9月2日まで上映中なので、見逃した方は是非ご覧になってください。 「強い」という言葉の意味を突き詰めていくと中村哲医師のような生き方に辿り着くよう…

『FLEE』

『FLEE』は、デンマークのアニメ映画でしかもドキュメンタリーである。 この映画がドキュメンタリーをアニメで撮った理由は、主人公であるアフガニスタン難民の男性の顔を晒さないためなので、本人が特定されないシーンなどは実写が混じることもある。こうい…

『長崎の郵便配達』

『長崎の郵便配達』は、同じく第二次世界大戦を扱ったドキュメンタリーでも、昨日の『ファイナル・アカウント』とはかなり違う。元英空軍パイロットと長崎の被爆者の交流が軸になっているために、憎しみの感情が入りこんでいない。 もちろん、チャーチルは米…

『ファイナル・アカウント』 ネタバレあり〼

これは2020年のドキュメンタリーであり、つまりもうホロコーストの当事者たち、それは、被害者、加害者ともに、その当事者であった人たちの直の証言を得るのは難しい時代になりつつある。 今回のこの映画でインタビューを受けている人たちは、ヒトラーユーゲ…