映画

『658km、陽子の旅』ネタバレ

『658km、陽子の旅』 菊地凛子主演のロードムービー。第25回上海国際映画祭で、最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞を受賞した。 監督の熊切和嘉の作品では、私は『海炭市叙景』と『ノン子36歳(家事手伝い)』を観ている。『海炭市叙景』は、佐藤泰志…

『the Path 〜 パルバディ・バウル 風狂の歌ごえ』

存在だけは知っていた「ポレポレ東中野」って映画館に今回はじめて出かけたのは、この映画は、これを逃すと他でやらないかもしれないと思ったからだった。 「パルバディ・バウル」の「バウル」の部分が一般名詞で、これは、「歌う托鉢僧」のようなものらしい…

『アルマゲドン・タイム』ネタバレ

最近に観た映画の中でいちばん心に残った映画というと、この『アルマゲドン・タイム』だろうと思う。 「アルマゲドン・タイム」という「?」なタイトルはザ・クラッシュの曲名からとっているそうだ。舞台は80年代のアメリカで、ジェームズ・グレイ監督の実体…

『共に生きる 書家金澤翔子』

書家として生きているダウン症の女性のドキュメンタリー。金澤翔子のお母さんである金澤泰子は翔子が5歳の頃からひたすら文字を書かせたそうだ。 泰子自身もともと書道に関わっていたに違いないけれど、書道教室も自宅でできるってことで、翔子が生まれた後…

『君たちはどう生きるか』

金曜日のレイトショーが満席だったので、土曜日の朝になった。 宮崎駿の新作を見逃す映画ファンも少なかろう。 テーマ、モチーフ、キャスト、キーヴィジュアルに至るまで、事前にアナウンスしない戦略の意味はよくわかった。 つまり、これは宮崎駿の新作なの…

『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』

伊藤沙莉が主演を務める探偵もの。タイトルを聞いただけで、永瀬正敏が探偵濱マイクを演じた『我が人生最悪の時』を思い出させる(それがまた『我が生涯最良の年』って映画のパロディだが)。探偵濱マイクはのちにTVシリーズにもなった。あの当時の永瀬正敏…

『リバー、流れないでよ』『ドロステのはてで僕ら』ネタバレ

ヨーロッパ企画の映画は『曲がれ!スプーン』とか『サマータイムマシン・ブルース』とか観てた気がしたけど、あれはヨーロッパ企画の舞台を映画化したもので、正確にはヨーロッパ企画の映画じゃなかった。『12人の優しい日本人』が三谷幸喜の映画でないのと…

『アダマン号に乗って』

アダマン号と言っても、セーヌ川に浮かぶ船みたいに見える水上建設なんだけど、精神病院のデイケアセンターで、「制度精神療法」ってのが行われている。「病院という場が病気にならぬようにしなければならない」というスローガンで実践されているものだそう…

『逃げきれた夢』

二ノ宮隆太郎ってたぶんすごい人だと思う。 この『逃げきれた夢』が商業デビューらしいが、「商業デビュー」の言葉の意味がよくわからない。私が過去に見た『枝葉のこと』『お嬢ちゃん』は商業作品ではなかったらしい。とにかく、2作品とも素晴らしかった。 …

『トリとロキタ』

先週末は、『岸辺露伴、ルーヴルへ行く』、『最後まで行く』、『トリとロキタ』、『アフターサン』を観た。 オススメは『岸辺露伴、ルーヴルへ行く』だけど、その前に『トリとロキタ』について。 以下はこの映画を監督したダルデンヌ兄弟のインタビューだけ…

『the Son/息子』ネタバレ

この週末は『世界の終わりから』『the Son/息子』『ガール・ピクチャー』『パリタクシー』『レッド・ロケット』を観た。 『the Son/息子』は、アンソニー・ホプキンスにアカデミー主演男優賞をもたらしたフローリアン・ゼレール監督の最新作で、『ファーザ…

『世界の終わりから』ややネタバレ

紀里谷和明って映画監督について、これまでまったく何も考えたことがなかったけど、ここに辿り着けてよかった。 つうのは、監督デビュー作が『CASSHERN』だから。「キャシャーン」はタツノコプロのテレビアニメだけど、それを「CASSHERN」って。 たとえば、…

『TAR/ター』ネタバレ!

書き忘れてたけど『TAR/ター』も観たんだった。それでも『J005311』の方がオススメ。 ケイト・ブランシェットが演じているリディア・ターという女性のキャラクターが意外に単純で、何なら愛すべきと評してもいい。 レズビアンなんだけど(『キャロル』を思…

『J005311』

この週末はこの『J005311』と『オオカミ狩り』『MEMORY』『デスパレート・ラン』『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』を観たが、『J005311』がいちばんオススメ。 クレジットを見ると、河野宏紀(監督、出演、脚本、編集、整音)、野村一瑛(出演)…

『ザ・ホエール』

もう言い尽くされてるだろうけれど、今年の米アカデミー賞は、カムバック賞めいていた。「エブエブ」の2人もそうだが、『ザ・ホエール』の主演、ブレンダン・フレイザーは、さまざまなトラブルで、いわゆる「干されていた」。 www.bbc.com この作品が主演男…

『search/#サーチ2』

横浜の後、新百合ヶ丘のレイトショーで『search/#サーチ2』。帰宅は日付が変わったけど、朝早いより性に合うので。 『search/サーチ』の続編ってわけじゃないので、これ単体だけ見ても楽しめる。すべてがパソコンやスマホなどの端末画面だけで語られるって…

『聖地には蜘蛛が巣を張る』

わざわざ横浜に観に行ったのはこの映画。思い返してみると、コロナ禍もあいまって横浜美術館が改装に入ってからは横浜に出かけてなかった。 kino cinemaみなとみらいは横浜美術館とMARK ISの信号を渡ったところ。夕方からってこともあり、横浜駅からぶらぶら…

『GOLDFISH』ネタバレ

この週末は『アラビアンナイト 三千年の願い』、『赦し』、『GOLDFISH』を観たけれど、『GOLDFISH』が圧巻。 監督の藤沼伸一さんはアナーキーのギタリストだそうだ。「だそうだ」じゃねえだろっ!って言う人がいるかもしれない。ポスターのビジュアルが気に…

『茶飲友達』ややネタバレ

この映画は、じわじわヒットしてきているらしい。個人的にはスター俳優が出ていない映画は大好き。このキャストの中で見知った顔は渡辺哲さんくらい。 何よりも、私が知らないだけで、日本には腹のすわった女優がいっぱいいるんだなぁと感服させられる。 実…

『ベネデッタ』

修道院とは、現実にはどんな場所なのか、うまく想像できない。というより、つい想像をたくましくしてしまう。 ココ・シャネルが少女時代を修道院ですごしたエピソードは有名だが、一方で、そのエピソード自体がココ・シャネルの作り話だという説もある。 そ…

『生きる LIVING』、『生きる』 ネタバレあります

カズオ・イシグロ脚本、ビル・ナイ主演『生きる LIVING』を観て、そのオリジナル黒澤明の『生きる』も観た。 ビル・ナイといえば、もちろん出演作の枚挙に暇がないが、オードリーの若林正恭さんが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』以来ハマったという『ア…

『マッシブ・タレント』

今週末は、東京モーターサイクルショーに加えて、よい映画が多かったので何から書くか迷うんだけど、まずはこれじゃないかと思う。 ニコラス・ケイジの作品なら何でも観るって映画ファンは多いんだと思うが、まあ当たり外れの多いことには違いない。それは、…

『シン・仮面ライダー』『ヴァニシング・ポイント』

この二作、確かに同じ週末に観たこともあるけれども、くくりとしては懐かしの70年代。 『シン・仮面ライダー』は、伊集院光さんが過密スケジュールの中、まんじりともせず観たそうで、大絶賛していた。でも、それは多分に懐かしさじゃないかなと思います。ご…

映画『ダークウォーターズ』で・・・

映画『ダーク・ウォーターズ』で、問題になっていたPFASについて、アメリカの環境保護庁が、規制を強化することが発表された。 汚染水の被害が住民に出て、そして、裁判で戦って勝って、それが映画になって、一般の国民にも知られることとなって、政府が規制…

『ヒトラーのための虐殺会議』

1942年1月20日に開かれたヴァンゼー会議を議事録をもとに再現した映画。 ヴァンゼーとGoogleマップで検索してみると、今でもその会議が開かれた家が保存されているのがわかる。ヴァンゼーのゼー(see)はドイツ語で湖を指すそうだ。 会議の参加者でまず目を…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

真っ先に思い出したのは『クレイジー・リッチ』だった。純然たるアジア系主人公のハリウッド映画。 内容というほどのものはなく、ただただ面白い、ゴージャスで緻密に織り上げられたドタバタメタバースSF。 ただ、車椅子に座っている老爺さえもカッコいい見…

『フェイブルマンズ』

この1週間くらいで『フェイブルマンズ』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『フラッグデイ』、『ワース 命の値段』、『BLUE GIANT』を観たが、その中でもし人に薦めるなら『フェイブルマンズ』。 『フェイブルマンズ』は監督のステ…

『エンパイア・オブ・ライト』ちょっとネタバレ

金曜日のレイトショーで、そんなに期待せず出かけた。期待があったとすれば、昔の映画館の話だそうなので、ジュゼッペ・トルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいのかなとか思ってたかもしれない(ちなみに『モリコーネ』も観たばかりだったし)…

『ミスター・ムーンライト』

1966年のビートルズ来日をめぐるインタビュー集。ビートルズ自身の映像はあまり出てこない。この映画に先立つニュースで、ビートルズの武道館公演を、その警備を担当した警視庁が撮影した映像が公開されたというのは聞いていたのだけれど、ただ、これは無音…

キネマ旬報ベスト10

キネマ旬報ベスト10が発表された。主演男優賞が『土を喰らう十二ヶ月』の沢田研二。あいかわらず渋い。 小林信彦さんを久しぶりに見た。週刊文春の連載で想像してたほど重篤(?)な感じでもなくしっかりしていて何よりだった。キネマ旬報 2023年2月下旬キネ…